「COVID-19」関係の報道に感じるいくつかの疑問 Part2(2)
〜データはきちんと分析されているのか


3.データ分析は行われているのか

 4月20日配信の栗野的視点(No.681)で『武漢の「成功」に倣えは正しいか』と題して書いたが、「ウイルスとの共存」という意味では中国政府が取った「都市封鎖」は世界に誤ったメッセージを発したようだ。もちろん、これは受け手の側の問題で、同じ方法を採用するか、スウェーデンのように当初から「共存」策を採るかはそれぞれの国がどれを選択するかということだが。

 疑問に思うのは本当にデータの分析が行われているのかということだ。もちろん行われているのだろうが、データの分析といっても闇雲に行われるわけではない。想定した目的、戦略と言い換えてもいいが、知りたい内容によって分析の方法、項目が変わる。
 要は「都市封鎖」という方法を採るか、「ウイルスとの共存」という方法を採るかでは分析する内容が異なる。
 前者の場合は感染者数や陽性率に重きが置かれるかもしれないが、後者の場合は重症化した人をより詳しく分析することが重要になる。
 例えば性別、年齢、現在、過去の病歴、健康状態といったことまで掘り下げて分析し、重症化する危険性が高い人を分類することである。

 これについては現段階でもある程度分かっていることがある。女性より男性、若者より高齢者、健康な人より気管支や肺に問題を抱えていたり、糖尿病、高血圧を抱えている人の方が重篤になるリスクが高いということが分かっている。
 さらに細かく分析すれば、もっといろいろなことが分かるかもしれない。そうすれば打つ手は随分変わって来るだろう。

 今のように全国、全国民一斉に籠城ならぬ自宅に籠もって人と接触するのを避け、ひっそりと暮らす必要はないかもしれない。古来、籠城戦に勝ち目はない。打開できるのは外から援軍が来て包囲網を解いてくれた時だけだ。
 今回に即して言えば、抗ウイルス薬の発見・開発、ワクチンの開発がそれに当たる。ただ、それまで兵糧が持てばいいが、助けが来る前に兵糧が尽きれば待っているのは悲惨な状態ということになる。

 今、「自粛」を緩めれば、爆発的感染が起きる可能性が高いと言われるが、重篤化するリスクの高い層が分析できていれば、そこを重点的に守ればいいということになる。全国民を対象にすれば対応医療機関・医療関係者やベッド数の不足だとか休業補償費(中には休業補償費も出さずに休業要請をしている自治体まであり、後者は何をか況やというか無茶苦茶以外の何物でもない)だってうんと少なくて済むはずだ。
 ましてや感染者がゼロの県や自治体、また感染者数が1桁の県が全国に倣えで「自粛」する必要もなくなるだろう。
 きちんとした分析をすれば今後、的を絞った対策が打てるのではないか。とにかく今回の「騒動」は相手に怯え、ひたすら籠城を決め込み、援軍(ワクチンの開発)が来るのを待っているような気がするのは私一人だろうか。

4.エビデンスに基づいているのか

 最後に、日頃「エビデンス」という語をよく口にする人達が、今回は確たる証拠や根拠に基づいて発言しているのかどうか疑問に感じる点を一つ。
 パチンコ店の営業自粛要請である。たしかにパチンコ店が「3密」なのは分かる。だが、同業界を「スケープゴート」のような扱いにするエビデンス(証拠・根拠)はあるのだろうか。その辺りをきちんと説明する必要はあるだろう。
 パチンコ店でCOVID-19に罹患したとか、パチンコ店から集団感染(クラスター)が起きたとかいう事例があるなら納得できるが、ただ単に「3密」だからという理由だけで店名の公表をしたりするというのは明らかに行き過ぎである。
 中には休業補償もなしに休業要請だけをしている自治体も散見されるが、こんな無茶な話はない。

 予防措置だという言い方、見方があるかも分からない。しかし、そういうことを容認すれば、今後適用範囲はどんどん広がっていくだろう。相手に反論の機会も場も与えずに一方的に決めていくのは民主主義のルールに反する。
 今回は非常事態だから許されるのか、ウイルス相手だから許されるのか。それとも全体のためなら個は我慢すべきだというのか。
 こうした点に異を唱える声はほぼ皆無に近いが、これこそ全体主義の勃興で、今後、世界は大きく変わっていく危険性がある。


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