踏み間違えミスはAT車の構造的問題
ところで、踏み間違い事故はいつ頃から問題視されていたのか。日本でAT車の普及が50%を超えた1986年にはAT車の「急発進・急加速事故」が頻発し、ブレーキとアクセルの踏み間違いがすでに問題視されていた。
1983年1月から1988年9月の間に運輸省(当時)に報告のあった「急発進・急加速」による事故事例や苦情事例を詳細に分析し、1989年に運輸省交通安全公害研究所が「オートマチック車の急発進・急加速に関する車両構造、装置面での原因究明を図るための試験調査」を公表。
それによると運輸省に報告のあった急発進・急加速による事故事例や苦情事例だけで1,108件。それらを車の構造や装置の試験など綿密な検討を行い調べたがブレーキ機能の欠陥は認められなかった。その結果、事故原因は運転者の操作ミスと結論づけられ、「運転者においてはブレーキ操作を確実に行うことが必要である」と報告している。
因みに運転者本人がブレーキの誤動作だったと認めた例は1,108件の内14件のみ。最近でこそ踏み間違いをした、踏み間違いだろうと認める高齢ドライバーが出ているが、こういう事故の場合、長年車を運転している自分が踏み間違いなどするはずがないと思い込むし、そう主張するのは当然かもしれない。
つまり「ブレーキとアクセルの踏み間違い」はなにも最近になって増えてきた事故でも、高齢者に多い事故でもないのだ。
では、なにが問題で起きているのか。それは仁平義明東北大名誉教授らによっても指摘(日本オペレーションズ・リサーチ学会2000年11月号の「オートマチック車の運転エラーとシステム・デザイン」参照)されているが、AT車の構造的な問題から来ているようだ。
そもそもAT車が導入された時、自動車の構造から変える(AT車に合ったものにする)べきではないかという議論があったようだが、種々の問題からMT車からクラッチを外した構造になった。ギヤシフトの配置も何度か変更されている。
MT車の方が事故が少ない
それはともかく、最近、踏み間違いを防ぐいくつかの方法が提案されている。自動車業界を筆頭に国を挙げて取り組んでいるのが自動運転。その中の一つの自動ブレーキシステムはすでに一部で実用化されている。
これが完全実用化されれば踏み間違い事故はなくなると期待されてもいるが、果たしてそううまくいくかどうか。ソフトにバグは付きものだし、ソフトの暴走やフリーズはよくある。そうしたことが車では絶対起きないと言い切れるだろうか。
MT車からAT車に変わればドライバーは煩雑なギアシフトから解放されるから事故も減ると言われたのではないか。それがどうだ。MT車よりAT車の方が事故が多いという結果さえある。
2004年に鳥取環境大学環境情報学部情報システム学科の鷲野翔一教授(当時)らが全国でAT車とMT車の事故率を調査した結果、MT車はAT車の半分だった。ヨーロッパでも同じで、MT車の方が事故率は低い。
因みに日本ではAT車の普及が85%を超えているが、ヨーロッパではMT車の方が価格が安いこともあり、日本とは逆に大衆車の90%がMT車と言われている。
となると、AT車をやめてMT車にすべきだという議論が出てくる。ところで今の日本でMT車が買えるかというとかなり難しい。新車でMT車を併売しているのは現段階ではホンダだけになっている。他社にMT車を復活する動きもない。ホンダさえ今後いつまでMT車を販売するか不明だ。
では中古車市場ではどうかと言えば、これまた少ない。それはそうだろう。新車市場にMT車の供給がなくなれば中古車市場でも出回らなくなるのは当然だ。それ故、AT車からMT車に乗り換えろという議論は現段階では非現実的すぎる。
(3)に続く
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