崩壊するニッポン(4)
「安全・安心」神話の崩壊(4)
社会に蔓延する虚偽と保身


社会に蔓延する虚偽と保身

 あれは共産圏、独裁国家のことで日本ではそんなことはない、と思っている人がいるなら、その人はよほどのお人好しかもしれない。
 そういう人にはミルトン・マイヤーの著書「彼らは自由だと思っていた」を紹介すれば充分だろう。
 マイヤーは同書の中でマルティン・ニーメラーの詩を引用しながら次のように書いている。

 ナチスが共産主義者を攻撃した。
 彼はやや不安になったが、彼は共産主義者ではなかったので、何もしなかった。
 そして彼らは社会主義者を攻撃した。
 彼は不安だったが、社会主義者ではなかったので何もしなかった。
 それから学校が、新聞が、ユダヤ人がとなり、彼はそのたびに不安になったが、
 やはり何もしなかった。
 そして彼らは教会を攻撃した。
 彼は教会の人間であった。だから彼は何かを行なった。
 しかし、それは遅すぎた。

 いかなることも最初は小さなことから始められる。25億円着服した男が数日前、台湾で逮捕されたが、彼もいきなり25億円横領したわけではない。最初はもっと少ない金額を着服し、徐々に着服金額と回数が増えていき、14年間で合計金額が25億円に達したのである。
 それにしても14年間もよく気付かなかったものだと思う。よほど管理がずさんだったのか、よほど儲かっていた会社なのか。いずれにしろリスク管理ができていなかったことだけは間違いない。

 犯罪であれ、歴史の改竄であれ、最初は小さなことから行われる。いかに早く小さな段階で気付き是正するか、これぐらいはいいだろうと見過ごし、いよいよになって声を上げた時は「遅すぎた」と後悔することになる。
 公文書の改竄、「モリカケ」問題はその一歩である。次は「存在」を「不存在」とし、「なかったことにする」。巷で流行っているダイエットなどのCMに習ったわけではないだろうが、自衛隊の日報や官僚のセクハラを「なかったことに」されたのではたまったものではない。
 昔は(といってもせいぜい20、30年前だが)国会で証人喚問に呼ばれば極度の緊張のあまり宣誓書へ署名する手が震えたほどだが、この頃は高を括って、「刑事訴追の恐れがあるので答弁を差し控えたい」と平然と証言を拒否する始末。この戦術を編み出した弁護士自身が最近はやり過ぎで、許せないと憤慨している程だ。

 昨今、平然と嘘をつく人が増えているが、官僚も信じられないとなると、本当にこの国には信ずるものがなくなってしまう。人を見れば嘘つきと思わなければいけないようでは安心して住むこともできない。
 佐川宣寿・元理財局長、福田淳一・財務事務次官という官僚トップが平然と、あったものを「なかったことにする」のだから、こうした権力を嵩にきたパワハラ、セクハラ、保身のために嘘をつく風潮は社会全体にますます蔓延していく危険性がある。
 この国に再び「安全・安心」は戻るのだろうか、戻せるだろうか。


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