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法が軽んじられるのは危険な時代(1)


 この頃、世の中が勇ましくなってきた。
「勝ってくるぞと勇ましく・・・」
やがてこんな歌があちこちから聞こえてくるのではないかと危惧している。
そういえば、昔、パチンコ屋に行くとよく軍歌がかかっていた。店内の音楽が軍歌に変わると、途端に勇ましい気分になり、なぜか出玉が増えそうな気がしたものだ。
 パチンコ屋ではいまも軍歌がかかっているのだろうか。禁煙と同時にパチンコにも行かなくなって40年近くになる。いまではパチンコ屋もすっかり様変わりしているらしいから、もはや軍歌などかからないだろう。
 ところで、冒頭の歌は次のように続いている。「誓って国を出たからにゃ、手柄たてずに死なれよか」。すると、これに呼応するように「『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考え」が「蔓延したのは・・・、非常に残念だ」という声が聞こえてきた。
 聞こえてきたのは大本営か参謀本部辺り? いやいや、そんな以前の話ではなく、つい最近。それも国会の方から聞こえてきたから驚いた。しかも、戦争など全く知らない30代の若い世代から。

 とかく勇ましいのは戦争を知らない世代。知らない、経験したことがないから、一度部隊を動かしてみたい、武器を使ってみたいと思うのかどうかは知らないが、専守防衛ではなく攻守防衛を唱える輩がやたら増えてきた。やられる前にやれ、とばかりに法律まで変えようとしているから危なくて仕方ない。
 それにしてもなぜこれほど危険な意見が政界に充満しだしたのか。もしかすると戦争を経験した世代が政治の世界も含め、社会の第1線から退いてきたことと関係あるのかもしれない。
 かつての自民党は党内に幅広い層を抱え、互いに論議することで極端にブレることを避けてきたが、いまや戦前・戦中世代の重しが取れたことで、誰も彼もが右へならえで反対意見を言う人が極端に減ってきた。
 さすがにこれではまずいと危機感を持ったのも旧世代の人達や、かつての派閥の領袖で「自民党は戦前の大政翼賛会のようになっている」(山崎拓元副総裁)と日本弁護士連合会主催「戦後70年記念シンポジウム」で苦言を呈しているが、若い世代は聞く耳持たずで、「わが国を守るために必要な措置かどうかを気にすべきで、法的安定性は関係ない」と嘯くほどだ。
 とにかく、このところの法を軽んずる発言には驚くばかりというか寒気さえ覚えるが、これらの発言者に共通しているのは安倍首相に近い存在で、若い世代ということだ。

 言論封殺、恣意的な法解釈の変更は危険な徴候である。歴史を紐解けば、古今東西、戦争に突き進む前には皆同じことをしているのが分かる。
 社会の矛盾を最も敏感に感じ、反応するのは60年代でも70年代でも若者だった。翻って今の若者はどうか。すっかり牙を抜かれておとなしくなってしまったのか、それともネットの世界をリアルと感じ、現実世界で起きていることは虚構と感じているのだろうか。
 いやいや、そうではなさそうだ。さすがにこれほど露骨な形で表れると黙っていられないと、若者本来の感性と抵抗意識が甦り、国会前をはじめ各地でデモも行われている。
 そう1歩後退は2歩後退に繋がる。最初の1歩をいかに踏みとどまるかが大事。とかくこの国は異論を認めず、群れたがる習性がある。少しでも皆と違っていれば仲間外れ、イジメの対象、果ては「非国民」などと罵倒し、存在そのものまで全否定しようとする。こうした動きに同調してはいけない。その道がどこに繋がるのかをよく考えて行動したい。

                                             (2)に続く

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