2025年、2030年の社会は?〜世界の製造業は半減する(2)
〜大手を待っているのは再編の波


大手を待っているのは再編の波

 では大手製造業はどうか。こちらはさすがに資金もあり、AI化も怠りないだろう。家族経営ではないから後継者難ということはなく安泰・・・。
 というわけにはいきそうにない。企業規模は違っても国際競争にさらされているという点では同じだ。いや、むしろ大手企業の方が厳しいとも言える。そして厳しさは年々増してきている。
 というのは中国等のライバル企業がどんどん力を付けていき、今でさえ彼らの方がコスト競争力で勝っているが、5年後には技術力でも彼らの後塵を拝さざるをえなくなる。
 それだけでなく他のアジア諸国の、いままでは日本の下請け的な位置にいた企業が力を付け、ライバル企業として立ち塞がってくる。

 市場がグローバル化されればされるほど競争は激化し、市場経済の変化を受けやすくなるから経営の舵取りも難しい。そういう意味では中小より大手の方が大変と言えるかもしれない。曙ブレーキやタカタ、日本製鉄の躓きはそのことを如実に示している。
 この3社に共通しているのはその分野で高いシェアを誇っていたことと、自動車関連産業ということである。
 自動車産業はここ数年、北米市場の好景気に支えられ売り上げを伸ばしてきた。ところが日産自動車にも見られるように、北米市場で少しでも躓いたり、市場の変化を読み誤ると業績が急激に悪化する。3社はその好例と言える。

 タカタは「エアバックのタカタ」と言われ、各自動車メーカーからエアバックを受注していたが、事故から身を守るべきエアバックが異常爆発し搭乗者の死亡事故を引き起こし、それが引き金になり、急激に売り上げがダウンし経営破綻した。
 実はそれ以前からエアバックに問題があることを認識しながら、そのことを隠蔽してきたことの方が問題にされたわけだが、超優良企業と言われていても対処を誤れば一気に経営悪化する見本みたいなものだ。

 一方、曙ブレーキは好調な北米市場での不振が原因と言われている。といっても特に何かを失敗したわけではなく、米国メーカーのセダン撤退で販売数量が減少したとか、新規受注に失敗したとかいう、どれかが致命傷というわけではなくても、一つ一つは深手でなくても、重なれば(経営判断を誤れば)命を落とすことになるというわけだ。
 それにしても北米自動車産業は好景気だったのに、なぜという疑問がわくが、利益率の低さとキャッシュフローの少なさが問題だったと言われている。そうならざるを得なかったのは過当競争故である。

 過当競争から抜け出したい−−。いずこもそう考えているはず。だが、そこから抜け出すのはそう簡単ではない。要はライバルが減少すればいいのだが、「一抜けた」とカードを投げ出す所はそういない。悪手で端から負けている所は早々に降りるだろうが、そういう相手は元からライバルでもない。
 降りて欲しいのは競り合っているトップ集団の中からだが、その集団をキープしている走者はよほどのアクシデントでもなければ自ら降りることはない。結局、最後の仕掛け時期を睨みながらの持久戦になっていく。

 持久戦になれば体力(資本)勝負で、できることなら避けたいのが本音だろう。そこで残されたのが提携・合併による再編成である。
 いままでライバルだった相手と手を組む、一緒になるわけだから、そう簡単にはいかない。一番の問題は企業文化の違いだろう。資本の論理だけではなかなか乗り越えられないし、過去にはトップ同士が合併で了承したものの結局破談した例も結構ある。これは男女の結婚でもそうだが、育った文化が全く違えば、愛だけで一緒になってもなかなかうまくいかないのと同じだ。
 それでも生き残る道はそれしかないとなると手を組まざるを得ない。一応、対等合併の体裁を取っても実際には対等ということは少なく、どちらかがどちらかに頼るという関係になる。

 自動車産業では5年後、10年後を待つことなく、すでにこうした動きは現実化している。自動車メーカーの競争がグローバルになっている以上、国内勢いは資本力から言っても技術の総合力から言ってもトヨタ自動車を中心にまとまり海外勢に立ち向かわざるを得なくなっている。スズキ、スバルがトヨタと提携せざるを得なかったのはそのためでもあるが、2030年には両社ともダイハツ工業と同じようにトヨタグループになっているだろう。
                                              (3)に続く

#世界の製造業が半減


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