「2000万円」問題の裏に隠されていた本当の恐ろしさ(1)
〜人生100年もカネ次第


 この頃いろんなところで「人生100年」という言葉や文字を見聞きする。メディアだけではない。「100歳まで生きましょう」と事あるごとに言う友人もいる。その度に「そんなに生きなくていい」「100歳までも生きられない」と言葉を返すと、「頑張りましょうよ。どんどん寿命が延びて200歳までは普通に生きられるそうですから、100歳まで現役で仕事をするような時代になるんですから」と言われる。

人生100年もカネ次第

 いやはや大変な時代になったものだ。200歳は別にしても平均寿命100歳になり、90歳まで働かなければならないのか。いやいや、そんなに走り続けたくない。走り続けてどうする。ゆっくりスローライフで生きたい、と思うが政府もメディアも「100歳まで生きろ」と煽り立てる。
 年寄りがいつまでもしゃしゃり出る社会はおかしいと思うが、最近の年寄りは皆元気だ。元気なのはいいが、議員から各種団体、同窓会長に至るまで役職を手放さないのはなにか役得でもあるのかと勘繰りたくなる。

 70歳過ぎても働ける社会は幸せかもしれないが、70歳過ぎても働かなければならない社会は不幸だろう。本来なら年金で、そんなに欲さえ言わなければ何とか生活していける社会でなければならない。
 ところが年金だけではとても生活できない。年金以外に2000万円(3000万円という話もあったが)は最低でも必要と言う。
 もちろん雀の涙にも足りない国民年金だけでは最低限の生活ですら難しそうだが、それにしても老後2000万円必要な人とはどんな生活をしている人なのだろうか。国民年金受給者なのか、それとも70歳前後まで企業の役員等を務めていた金持ち層なのか。あるいは国民押しなべて皆必要なのか。

 まあ麻生大臣の生活なら2000万円ではとても足りないとは思うが、いずれにしろ前提条件がよく分からないから誰に向かって言っているのか分からない。個人的なことを言えば、100歳までも生きるつもりがない、生きられないというのが現実。残り少ない資金から逆算すれば自分の「余命」は後何年と分かる。それ故、「2000万円必要」と言われても「ああ、俺には関係ない、どこかの金持ちの話か」と思ってしまう。
 大体、企業年金からして大手企業と中小企業では大きな差がある。生涯収入に雲泥の差があるなら大手企業に就職した方がいいに決まっている。それなのに起業の夢を煽るのは無責任すぎないかと思ってしまう。夢を煽るならリスクもきちんと伝えるべきだろう、とこの歳になって思っても遅いが、セーフティーネットとまではいわないにしても、ある程度のシステムも作らず、若者は安全・安定志向、チャレンジ精神がない、と言う方がおかしい。
                (2)に続く


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