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 危機をチャンスととらえよう。(2)


 社名は中野建築システム(株)。「栗野的視点」の読者の皆様なら中野建築システムという社名にご記憶があると思うが、ご存じない方はHP内の「栗野的視点」に「社員を後継者にした中小企業の創業者(2)〜1人1億円を売り上げる少数精鋭企業、中野建築システム」を一読いただきたい。
 この記事を書いたのはちょうど1年前。それから半年後に不動産不況が始まり、年末にかけて半導体・自動車産業が未曾有の不況に見舞われたわけで、同社もかなり影響を受けているのではないかと案じていた。

 私が中野会長に初めて会ったのは7年前の02年。当時はまだ社長だったが、それから程なく「2年後に彼に社長職を譲ります」と聞かされた。彼というのは当時まだ30代だった社員。社員といっても身内だろうと思っていると、まったく血縁関係はないという。しかも、「次の社長は君達の中から」「社長をやりたいものは手を挙げてくれ」と朝礼で言って、手を挙げた社員(実は彼が最も入社歴も年齢も若かった)を社長にしたというのだから面白い。
 実際に社長職を譲ったのはそれから5年後だったが、帝王学に3年を要したということだろう。

 同社がユニークなのは毎期予算は社員5人で5億円と決めていて、それ以上しないことだ。ところが2年前、すでに来期の予算まで達成してしまったから、以来、来期への「貯金」をしながら仕事をしていることになる。
 実は昨年末、同社の社員と偶然近くの書店で会ったので、来期の売り上げを今期中に半分達成したとのことだが、と念のため確認してみた。
 すると、すでに来期の予算の半分を達成していることを認めながらも、「この仕事は今日明日に成果が出るようなものではないからですね」と、日頃の取り組みの結果に他ならないという言葉が返ってきた。
 なるほど、この姿勢にすべてが表れている。勝っても奢らず、不況だからといっても必要以上に塞ぎ込まない。日々の仕事を淡々とこなしていけば、結果は自ずと付いてくるというわけだ。

「先義後利」の精神で

 お客様のために−−。
同社の姿勢を一言で表現すればこうなるだろう。
月並みな言葉かもしれない。ただ、同じように「お客様のために」と言いながら、どこかで不正な手段を講じていたり、経営破綻したところもある。
 どこが違うのか。
結局は言葉に込められた中身の問題だろう。
「お客様のために」が実は自社のためにが先で、その後がお客様だったり、Give & take が実はTake & giveだったり、Win Winという場合、先に来るWinは相手ではなく自社だったりというような。
 日本語でいえば「先義後利」である(実はデパートの大丸はこの言葉を同社の理念にしている)。「利」すなわち自社の儲け優先ではなく、「義」、道理にかなっていること、利害よりはまず社会のためにという姿勢で行うことが大事だろう。

 物事には適正ということがある。適正利潤、適正規模・・・。それをわきまえず、自分の分以上に拡大したり、欲張ったところほど、マイナスの影響も大きい。
結局、分相応に動いているところが生き残っている。

 いまから12年前、取材で出会ったある人の言葉を思い出す。
「茶筅のごとくありたい」
 彼は自らをそう語った。
 茶筅−−茶事の道具でありながら、唯一銘がない。他の道具、例えば茶碗は誰々の作というように必ず銘があるが、茶筅だけは作った人の名前がない。本当は作者が誰か分かっているのだろうけど、作者名が前面に出て自己主張することがない。
しかし、茶筅なくして茶事は成り立たず、茶事になくてはならない存在である。そんな存在で一生終わりたい。
 長崎市の老舗海運商社、澤山商会を中心にした澤山グループの社長、澤山精一郎氏の言葉だ。「分相応なところで仕事をするのがいい。着実に少しずつ仕事を増やしていくことのがぼくの方針」だと。

 さて、ものは考えよう。
不況だ、不況だと騒いでいても何も解決はしない。
人の行く逆に道あり、とは昔の人の教えにもある。
発想を変えればピンチもチャンスになる。
影に怯えず、打ち拉がれず、かといって分不相応なこともせず。
きっちりとした仕事をしながら、明日に備えようではないか。
笑う門には福来たる−−。
明るく、元気がいいところには女神も寄ってくる。



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