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「横並び」が日本を救う。(5)
〜拡がる移動スーパー「とくし丸」


 「とくし丸」は軽トラックを改造した車に食品、日用品を積んで過疎地などの買い物弱者の元を定期的に巡回販売している。
 仕組みはこうだ。商品供給は提携した地元スーパーから受ける。その商品を移動販売車に載せて巡回販売するのは販売パートナーと呼ばれる個人事業主である。
 この形態だけを見るとフランチャイズ契約のように見えるが、株式会社とくし丸に契約金、ロイヤリティー(毎月3万円の定額制)を払うのは提携スーパーの方である。
 販売パートナーはスーパーの商品の販売代行業者というスタイルだ。商品を仕入れて売るのではなく、スーパーの商品の販売代行をするわけで、仕入れ販売のような売れ残りリスクがない。
 商品の販売価格は提携スーパーの店頭価格+10円に設定されている。この10円をスーパーと販売パートナーで5円ずつ分ける。
 販売パートナー(個人事業主)の収入だが、日販7万円で月収34万円。そこから車両償却費、ガソリン代等の諸々(約10万円)を差し引いて、手取り24万円(月25日稼働計算)というところらしい。

 同社と提携しているスーパーは地域密着型が大半。因みに福岡県ではサンリブ、ジョイント、アスタラビスタ(佐賀県も)、中国地方では天満屋ストア(岡山県、鳥取県)、Aコープ西日本(島根県、広島県)等が提携スーパーとなっている。

 移動スーパー「とくし丸」活動は非常にユニークな取り組みで、こういう動きがもっと広がって欲しいと思うが、気になる点もある。
 まず販売パートナーの応募資格を大体35〜60歳くらいとしている点。「体力的にとてもハード」だし「注文を記憶したり頭もフルに回転させる仕事」だからというのが理由のようだが、これでは定年退職後の第2の人生として考えている人が参加できない(参加しにくい)。
 働き盛りの人の場合、これを主業務とするには売り上げをもっと追求しなければならないだろう。となると巡回ルートが問題になる。売り上げを考えれば社会貢献より効率を重視することになるからだ。その辺りをどうするのか。結局、本当に来て欲しい買い物弱者はこのシステムでも切り捨てられることになる。

 結局、本当に困っている過疎地の買い物弱者を救うためには非営利組織を起ち上げ、そこがやるしかないのではないだろうか。とはいえ赤字でやる人はいないだろうから、何らかの資金援助が必要になってくる。
 それを行政が負担するのか、それとも大企業、あるいはそこのトップ達に協力をお願いするのか。
 かつてこの国には支え合うという精神があったが、現在はない。むしろ欧米の方が寄付文化は残っている。なんでもかんでも米国を見習いたがる企業人もこの点だけは見習おうとはしないのが悲しい。

 いくつかの課題はあるが、移動スーパーとくし丸の動きは素晴らしい。買い物弱者、過疎地を救う一助には間違いなくなっている。こういう動きこそ「横並び」で参加して欲しいと思うが、金融業界などとは違い、流通業界は横並びがどちらかといえば嫌いな業界だけに難しいか。
 それでも営業時間の短縮は横並びで実施しだしたから、移動販売も可能性はなくはない。小売りの現場が原点に立ち返り、「行商」「御用聞き」+買い物弱者支援に乗り出すことを期待したい。

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