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菅首相の携帯電話料金値下げ要求はMVNOを潰す(2)


速度アップで使える低速モード

 またイオンモバイルや楽天モバイルのように大容量プランの値下げを実施したMVNOもあるし、低速時の速度を従来の128kbpsから200kbps、500kbps(mineo)、1Mbps(楽天モバイル)で使い放題を導入したMVNOも出てきている。

 低速時はデータ消費がなく、データの使い放題になるが、さすがに128kbpsの速度では使い物にならないが、200kbpsならメール程度なら問題なく使えるし、回線が混んでない時間帯なら画像データが多くないページなら少し我慢すれば使える。
 多くのMVNOは高速モードと低速モードの切り替えスイッチを用意し、両者の行き来を自由にしているが、1日に何度でも切り替えができるmineoやiijmioのような業者もあれば、そうでない業者もある。使い勝手がいいのは高速、低速モードを自由に切り替えられるタイプなのは言うまでもない。
 500kbps、1Mbpsになれば低速モードのままでも結構使える。ただし、これらの場合はオプション料がかかるが、mineoの場合は月額350円に設定されている。

 個人的な話になるが、実家の電話回線、インターネット回線は解約しているから、帰省中のネット環境はスマホのテザリング機能を利用してPCと繋いでいる。スマホでネットを見るのとPCでネットを見るのではPCで見る方がデータ量が多いから、消費するデータ量も多くなる。
 契約している月3GBでは半月程度も持たずに消費してしまう。そのため極力PCは使わず、スマホ中心でネット接続するか、契約データ消費量ゼロの低速モードにしてPCと接続しているが、その時500kbpsは助かる。
 これが1Mbpsなら低速ではなく中速モードと言っていいだろうが、ほとんど不自由なく使えるはずだ。通話付きSIMで1GBで契約し、オプション料金を少し払い1Mbpsの使い放題ができれば言うことなしなのだが。

 政府がキャリアの電話料が高いから値下げしろと言うのはよしとしよう。しかし、上記で見たようにMVNOは料金の値下げだけでなくユーザーサイドに立ったプランを増やしてきている。
 そこにキャリアが菅首相の要請で値下げに踏み切れば、せっかく育ってきている低価格SIM市場を政府が潰すことになりはしないか。本気でNVNOを育てようと考えているならキャリアに値下げを要求するより、MVNOへの移行をしやすくするようキャリアの卸価格を下げるよう要求すべきではないか。
 そうすれば日本通信に次いで本当の意味でのかけ放題プランを導入するMVNOが出てくるだろうし、MVNOはさらに多様なプランを投入できるはずだ。

 もう1点は5G時代を迎えキャリアも設備投資が必要になっている。それでなくても国内のキャリアはNTTグループをはじめとして5Gへの対応の遅れが指摘されている時でもある。キャリア各社にはそのための投資を促しつつ、MVNOを潰すのではなく育成し、競争を促すためにキャリアの卸価格の値下げの方を指導すべきだろう。

 どうも菅首相は「ふるさと納税」しかり、消費者受けする目先の分かりやすい政策のみを実施したがる傾向があるようだ。「ふるさと納税」は故郷支援の納税というより、名前を変えた通販と化しているのが現状だし、もともと高所得者に有利な制度になっている。それなのに、この政権の支持率が高いのが不思議だ。



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