淘汰の時代に入ったSIMフリー市場(3)
〜キャリアの巻き返しでベンチャーは潰される


第2、第3のFREETELも

 FREETELに感じていた予感は現実のものになったが、今後、SIMフリー市場はどうなるだろうか。
 その前に現在、MVNO業者は何社ぐらい存在しているとお思いだろうか。20社〜30社? いや、そんなに少ない訳はない。60社〜70社はあるだろう? もしかすると100社程度? 
 私も驚いたが実に約650社も存在しているのだ。この数を目にすれば「多すぎる」と誰もが思うに違いない。いくらSIMフリー市場が拡大し、契約者数が増えたとは言え、docomoなどキャリア3社の契約者数に比べると圧倒的に少ない。その小さい市場(契約者数でMVNOはdocomoの約11%)に650社がひしめき合っているわけだから明らかに過剰である。とはいえ、今後SIMフリー市場がさらに急拡大していけば話は別だ。

 では、その可能性はあるのか、ないのか。その指標になるのがdocomoの契約者数の増減だが、今期docomoの契約者数の伸びは予想を下回っている。理由はMVNOの契約者数が想定程伸びなかったからだ。
 つまりSIMフリー市場はすでに停滞期に入ったと言えるのかもしれないし、単なる足踏み状態だけなのかもしれない。いずれにしろ、いままでのような市場拡大はないと見ておいた方がいいだろう。
 となると、FREETELの二の舞い三の舞の可能性はある。因みにネット通信の黎明期に市場をリードしてきた老舗企業のBIGLOBEはKDDIに、NIFTYは現在、家電量販店のノジマに買収されている。

キャリアの巻き返しでベンチャーは潰される

 それにしてもdocomo回線を使っているMVNOの契約者数が伸びなかった理由はSIMフリー市場の停滞が本当の理由なのか。あるいはそれだけか。
 そこで浮上してくる要因が2つある。
1つはキャリアのサブブランドの存在。ソフトバンク系のワイモバイル、KDDI系のUQモバイルがそれだ。docomoはいまのところサブブランドを作る予定はなさそうだが・・・。
 自社グループ内にMVNOを抱えているわけだから、仮にソフトバンクから、auからSIMフリーのMVNOに乗り換えようとした場合、グループ内にも安い通信会社がありますよ。同じことならそちらを利用されたらどうですか、などと説得されれば、よほどdocomo回線でなければダメという人以外はすんなりと系列のMVNOに流れるに違いない。
 キャリアのサブブランドと新規参入のMVNOでは資金、仕入れ価格等も違い、平等な競争など端から成立していない。キャリアのサブブランド設立はMVNO潰しと言われても仕方ない。

 もう1つはキャリア自身が低価格プランを作ったことだ。auの「ピタットプラン」などは明らかにMVNO潰しの撒き餌だろう。
 「ピタットプラン」は好評で契約者数も伸びているが諸手を挙げて喜べるわけでもない。たしかに自社からの流出数を止めることはできたが、MVNO並みの価格設定だから契約数に比較して売り上げが増えず、痛し痒しというところだろう。
 それでもMVNO並みの低価格プランを打ち出したのはBIGLOBEを傘下に収めたように、MVNO潰しで経営が苦しくなったMVNOを傘下に収め、シェアを握るためだろう。

 この構図も過去に航空業界などでよく見たやつである。規制緩和等で新規参入ベンチャーが低価格をウリに伸びてくると早割りだなんだというプランを打ち出し実質値下げして新規参入業者潰しに出る。そして最後はホワイトナイト顔をして救援という買い叩き買収に出るという手である。
 なにもそこまでしてベンチャー・中小企業潰しをするのではなく、互いに棲み分けをするぐらいのことがなぜできないのかと思うが、強欲資本主義は徹底的に食い尽くさなければおさまらないようだ。
                             2017.11.17



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