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営業教育を軽んずべからず


 前号の「おせっかい焼きの勝手連的コンサル」には何人かの方からメールを頂き、ありがとうございました。
 さて、その中から今回はM氏から届いた下記メールを紹介したい。

 先週配信された「他社の営業社員を勝手連的教育」は興味深く読ませて頂きました。
当社も例外ではないと思います。
私はこの4月から管理職の立場になったこともあり、最近「教育」について色々考えることがあります。

 当社の場合、40歳手前で営業に配属される社員がいます。
最近は会社としても1年ごとが勝負で組織も1年ごとに変わり、その結果の異動によるものです。
そういう社員には営業としての業務の教育だけをすればいいのだろうと思っていましたが、甘かったです。中には「会社員として」どうあるべきかということから口を酸っぱくして言わないといけない社員がいます。
 例えば、お客に行ったときの訪問履歴の記載です。
これは必ず書かないといけないのですが、なかなか守られません。
工場にも日報的なものがあるので、内容が営業的になっただけです。
 以前の上司に聞くと、工場にいた時も書いていなかったそうです。
恐らく、若い頃に教育されていないか、教育されても聞かなかったかのどちらかなのでしょう。
 前者は論外ですが、後者の場合は最後はその人自身の意識の問題なのだろうな、と思います。本人が周りからの教えを守りながら、自分のやり方を見つけ出し、最後は指導できる力を付けていくのが普通のステップと思うのです。
 しかし、「周りからの教えを守りながら」の時点で既につまづき、他の人と差がつき結局以前いた組織では居場所がなくなったのかもしれません。
 そういう社員の指導は難しいです。しかし、現有勢力で戦わないといけない現実もあります。
粘り強く指導は続けますが、本人がその気にならないと絶対に変わりません。

 最近は、「その気にさせるにはどうすればいいのだろう?」という点をよく考えるようになりました。厳しくすることだけじゃ駄目なのか?とか、自分が言ったことを本当はどう受け止めているのだろう?とか色々考えたりします。
でも、考えすぎても仕方がないので、試行錯誤は続けながらも前進だけはするように努力しているところです。


 恐らく多くの管理職はM氏とある部分で共通した悩みを抱えているのではないだろうか。
 優秀な社員ばかりならなにも悩むことはないだろうが、大組織には大組織なりに、小組織にも小組織なりに悩みはあるもの。特に40前で営業職に異動になれば、当の本人も、受け入れ側の部署も、ともに悩みが深いかもしれない。本人が望んで異動した場合は別だが、そうでない場合は「なぜ俺が」という思いが本人に強いだろうし、受け入れ部署の方も「もう少しマシな人間をよこせ」という思いがあるかも分からない。

 かつて私にもサラリーマン時代があり、管理職も経験したから双方の気持ちがよく分かるが、ある部署で戦力外通告を受けた人間が他の部署で成績を残す例はそれ程多くない。
 異動で頭角を表した人間はその部署によほど適性が合っていたか、いい上司に恵まれたかのどちらかだろう。こう言ってしまえば運の善し悪しのように聞こえるが、ダメな社員は自分のことは棚に上げ他人、特に上司のせいにしがちで、そのことはM氏も指摘している通りだ。
 第一、いい上司という場合の「いい」という判断基準がはなはだあやふやである。優しく接してくれる上司もいい上司だろうし、厳しくしつけてくれる上司も後に振り返ればいい上司だったに違いない。

 ただ、教育にも時代の影響はあるようで、私などが社会に出た頃は厳しくしつけられるのが当たり前だったような気がする。手取り足取り教えられた記憶はない。むしろ技術でも営業でも「盗め」と言われた時代だ。私にはこのやり方の方が合っていたように思う。先輩、上司への反発心から勉強し、彼らのやり方を「盗んでいった」からだ。
 とはいえ社長や上司も厳しさ一点張りではなかった。入社したての頃には「お前を青年実業家に育てる。しかし何も教えない。俺の頭を盗め」と言われたし、小さな営業所を任された頃には、売り上げ未達成の言い訳に対し「お前は本当に真剣にやっているか」と諭され、30前で転職した時は毎朝朝礼で、売り上げ目標に達しない社員は「すぐ辞めてしまえ」と罵倒された。しかし、その直後にそっと呼ばれ「お前が人一倍努力しているのは知っている。お前の能力は買っているから、頑張れ」と励まされたりもしたものだ。
 結局、厳しくはあったが、フォローもあったのだ。

 厳しさとフォローを一人の人間がすることもあるだろうが、「社長(課長)はああ言ったが、本当はお前のことを評価していたぞ」などと組織内で代弁してくれる他の人間がいるといいが、最近は憎まれ役を買って出る人間がいなくなっている。誰もかれもがいい子ぶりたがり、厳しくしつける方を嫌がるのが問題だ。

 ところで、組織である以上、目標管理は必要だろう。しかし、その制度がうまく機能している組織、失敗している組織の違いはどこにあるのかについて、数日前、HTP研究所・伊藤克彦所長(リエゾン九州の会員)が隔月で発信している「HTP研究所レポートvol036」に「目標管理制度がうまく機能しない理由」と題した記事が載っていたので、次号で紹介したい。

 目標管理の方はそちらを参考にしてもらうとし、日本では営業教育はほとんどなされてないか、重視されてないようだ。(もしかすると大企業では体系だった営業教育を行っているのかもしれないが)
 私はもともと営業とか販売というのが苦手だったので、そういう仕事に就いた時はとても苦労した。しかし、苦労しただけに営業(販売を含む、以下同)はその人の資質に関係するものではなく科学だということが分かった。
 科学である以上、誰でも法則、基本を身に付ければ一定レベルまでにはなれるということだし、実際、部下や新入社員をそうしてきた(つもりだ)。


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