若い世代こそ健全
最近の若者は上昇志向というより、むしろ下降志向。欲がない、と言われ、経済が活性化しない一因はこれら若者の消費行動にもあるとされているが、未来から見れば彼らの方が健全かもしれない。
生まれた時からモノが溢れ、モノがない時代に育った世代から見れば、これほど幸せなことはないと思われそうだが、彼らはモノを所有し、モノに囲まれた生活が幸せをもたらせてくれるわけではない、ということを知っているから、むしろモノ以外に幸せを求めようとしているのではないか。まさに旧世代とは違うパラダイムを持っている世代。この世代が増えていることは未来の希望かもしれない。
少子高齢化が言われ、限界集落がどんどん増え、地方の市町村が消滅する危機(すでに町村の大半は消滅しているが)さえ取り沙汰されているが、それを促しているのは企業活動だろう。
かつてリモートオフィスがしきりに宣伝された時代があった。80年代当時といまでは通信状況は雲泥の差、天と地ほどの違いがある。むしろいまほどリモートオフィスやテレワーク、在宅勤務を実施しやすい環境はない。にもかかわらず、企業にそうした動きが広がるような様子は見られない。それどころか東京一極集中が加速しているのが現状だ。
例えば長崎県佐世保市に本社を置く通販会社、ジャパネットたかたは今年社長を交代したが、それと同時に本社を東京に移した。登記簿上の本社は佐世保市に残すと言っているが、地元の雇用は失われるし、人の往来も減ることになる。
これではますます地方は過疎化すると悲観的になりそうだが、その一方で都会から地方への移住者が増えているという事実もある。新しいパラダイムを持った層が生まれているのだ。
では、どの程度増えているのかといえば、4年で2.9倍になっている。倍率とか比率は数字のマジック的な部分があるので、これを実数字で示すと次のようになる。
09年度 2,822人
10年度 3,819人
11年度 5,143人
12年度 6,043人
13年度 8,169人
年々確実に増えているのが分かる。このうち首都圏、近畿圏から移住した人が全体の約30%(13年度)を占めている。(これらは毎日新聞と明治大学地域ガバナンス論研究室による共同調査)。
移住者数が多かったのは鳥取県962人、岡山県714人、岐阜県596人、島根県575人、長野県510人と続く。九州は鹿児島県466人、大分県233人と続き、四国は高知県の468人が最も多くなっている。
もし、生活のしやすさ、住みやすさを求めて地方都市へ移住するのであれば、九州では福岡市とその近郊ではないだろうか。都会の利便性と、すぐ近くに海や山の自然があり、そこそこ田舎生活も楽しめる。しかし、県外からの移住者が最も多かったのは大分県豊後高田市の114人(13年度)である。
こうした人達が増えている背景には行政の働きかけや、移住促進制度の充実などもあるだろうが、コンパクトシティ的な利便性や経済性とは違う価値観の人達が、それも若い層の中に、数としてはまだまだ少ないとはいえ、確実に増えつつあることを示している。
もしそうだとすれば、我々はまだ未来へ希望を持てるかもしれない・・・。いずれにしろパラダイムを変えなければ人類に未来はないことだけは確かだと思うが、それが単なる思い過ごしであることを祈りたい。
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