浄水場がPFASで汚染されている
PFASの中でも有害性や難分解性が特に高いのがPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)で、これらは米国、EUなどで、そして遅ればせながら日本でも製造、使用が禁止されている。
ところが、その物質が河川や土壌、水道水から検出されたのだから大変。直近では岡山県吉備中央町の一部に水道水を供給している円城浄水場からPFOS、PFOAが検出されていたことが判明した。
PFAS汚染が国内で最初に問題視されたのは沖縄、神奈川県などの米軍基地周辺。2015、2016年頃だ。
この時、原因と考えられたのは米軍基地で大量に使用されていた泡消火剤で、それが流れ出た河川が泡だらけになったことから発見された。もし、泡という目に見える現象がなければ住民は気付かず、それらの河川の水を利用していたのではないかと考えると恐ろしい。
健康診断等でがんの発症率が高い地区が疑われても水俣病、イタイイタイ病以上に気付かれなかったかもしれないからだ。
問題はPFASに汚染された水が土壌に沁み込み、分解されずに長年残り続けることだ。しかも、いまのところPFOS、PFOAを分解する技術は開発されていないだけに厄介だ。
岡山県吉備中央町の問題に戻ろう。
円城浄水場近辺で検出されたPFAS濃度は1400ナノグラム/1リットルである。この数値だけ見てもピンと来ないかもしれないが、国が設けた暫定基準値がPFOS、PFOA合わせて50ナノグラムと聞けば、その多さに驚くに違いない。実に国の基準値の28倍。因みにアメリカの規制値は4ナノグラム以下だから、アメリカの基準値の350倍になる。
吉備中央町の問題はPFASの数値の高さだけではない。今回、PFASの異常数値が発覚したのは10月13日に吉備保健所から「緊急に対処する必要がある」と指摘されて初めて発表したわけで、実はその前年にも24倍の数値が検出されていたし、さらにその前年にも国の基準値の16倍の800ナノグラムが検出されていたにもかかわらず発表も対策もしていなかった。
不都合な真実は住民に知らせないという行政の隠蔽体質が問題だ。
さらに深刻なのは汚染地域が岡山県吉備中央町や沖縄、神奈川県だけにとどまらず全国に広がっていることである。
例えば京都府綾部市を流れる天野川の水からは基準値の50倍を超えるPFASが、千葉県は白井市の約7倍をはじめ柏市、市原市、千葉市から、神奈川県大和市、藤沢市、大阪府大阪市、枚方市、吹田市、さらに兵庫県、奈良県、福岡県の各地から基準値越えの数値が見つかっている。
より深刻なのは地下水の汚染で東京都の各市、宮城県、神奈川県綾瀬市、大阪府摂津市・大阪市、兵庫県尼崎市、大分市、沖縄県宜野湾市・嘉手納町等が基準値を大幅に超えるなど、21年度に水質調査をした全国1133地点のうち13都府県の81地点で国の基準値を超えるなど全国各地の水が汚染されている実態が明らかになっている。
中でも深刻なのは熊本市の地下水汚染で、現在発見されたのは数か所の井戸水からだが、熊本市の水道水はすべて地下水利用だけに、今後汚染地域が広がる可能性がある。
同市が水道水を地下水で全量賄えているのは阿蘇の豊富な伏流水故だが、それだけに懸念するのは、同県には半導体関連企業が集積していることで、今年にも台湾メーカーのTSMCが進出を発表した。
半導体はPFASを使用するだけに半導体の処理水が河川に流れ出たり、土壌に沁み込むと地下水利用の水道水が汚染され、県民に健康被害が出る恐れもある。
これらすべてのことは経済優先の社会が招いたことであり、この先、人類が生存していくためには拡大・成長主義ではない考え方に転換する必要があるだろう。
#PFAS汚染
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