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子は親を見て育つのか、親が背中を見せていないのか。(3)
親が背中を見せていない


親が背中を見せていない

 もちろん団塊世代の親が皆こうではない。中には社会常識やルールをうるさく言う親もいる。B氏の親がそうだった。
 親は建設関係の会社員で現場で必要な資格をいくつも取っていたし、子には厳しく社会的マナーも教えているように見えた。
 彼には3つ上の兄がいたが兄弟間でも年賀状のやり取りも毎年行うし、食事の席でも自分だけグラスを傾けるということはなく、まず兄に注ぐなど、そのあたりはきっちりする男だった。
 そんな親の背中を見て育った子は社会常識もあり、しっかりしている、はずだ。建築関係の仕事に従事していればなおのこと。建築物が完成するまでにはいろんな業種、立場、年齢の人の協力を仰がなければできない。
 親を見習い様々な配慮を欠かさず仕事をしているに違いない。

 ところが、どうもそうでもないらしい。例えば年賀状。仕事関係先には出しているのかも分からないが叔父たちはBから年賀状が届いたことはないと言っていたし、家に来た時に一緒に酒を飲んでも共にグラスを傾けるという感じはなく、目上の叔父たちに酌をすることもなく自分だけ手酌で飲んでいたと聞けば、親の背中を見ていなかったのかと思った。

 Bの親は兄を始め親戚への年賀状その他の挨拶は欠かさず送り、兄弟でグラスを傾ける時も先に兄に勧め、その後差しつ差されつという感じで飲んでいたと聞く。
 親しき中にも礼儀ありで、我々世代に限ることではなく、その辺の礼儀をきちんとわきまえている者も多くいる。
 ただ、その一方でそうでない者が増えているのも事実だ。「四十にして迷わず」というのは今や完全に死語になっている。だからか、最近40代、50代の犯罪が増えている。

 そういう時代だから、と納得させられながら生きていかざるを得ないのか。それとも熱烈なトランプ支持者、安倍支持者のように「伝統的な家族関係を守れ」と叫ぶのか。彼らとは意味合いが違うが、「倫理」や「道徳」を口にしたくなる気も分かる。


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