おせっかい焼きの勝手連的コンサル(1)
〜他人の店の経営状態が気になる


怪しい男と思われている

 歳のせいなのかどうかよく分からないが、最近自分でも呆れている。
他人(ひと)のことが気になるのだ。それだけならいいが、よせばいいのについつい口出しをしてしまう。
 この間など信号停止中に降りて前の車の運転席のに近付きウィンドーガラスをノックすると、運転席の中年女性が顔を強ばらせ固まってしまった。サイドミラーを畳んだまま走っていたから、危険だと感じ教えてあげただけなのに。それもご丁寧に運転席側だけでなく助手席側のミラーまで手で開いてあげたのだ。
 中年女性ドライバーは自分のミスを恥じたのか、それとも私に対する勘違いを恥じたのか、その後、顔を真赤にして、しきりに恐縮していたが。まあ、いきなり後ろの車から得体の知れない男が出て、自分の車にやってくると誰しも緊張するだろうが。
 それにしても以前、知人から「だって、栗野さん怪しいもの。ヒゲを生やしているし、その顔でしょ」と言われたときはちょっとショックだった。ヒゲは30歳の時から生やしているし、髪を短髪にしたのは連れ合いを亡くしてから。日中は薄い色のサングラスをいつも掛けているが、それも白内障を患ったからで、目の動きが相手に見えるように色は薄めにしているが。う〜ん、やっぱり怪しいか・・・。

 まあ、この程度のお節介はまだいい方で、いつだったかスーパーで見かけた女性に声をかけ、とうとう家まで車で送って行ったこともある。
 女性と言っても80前のお年寄りで、小さなリュックを背負い、スーパーの買い物袋を片手に持ち、杖を突きながら歩く姿に母を重ね見たのと、転びはしないかと心配だったこともあり、しばらく様子を窺っていた。こちらもスーパーの買い物袋を両手に下げたままだったので、傍から見ると「怪しい」男だったかもしれない。
 誰かを待っている風でも、バスに乗る風でもなかったので、とうとう思い切って声を掛けた。
 聞いた自宅の地名は隣町だった。それなら帰る方向だから、ついでに送ってあげますよ、と自分の車に同乗させ送っていった。それにしてもなぜ、自宅から離れたスーパーで買い物をと思ったが、この日は掛かり付けの医院に診てもらうため出て来、その帰り道とのことだった。独り暮らしで、買い物は大変だ。階段の上り下りが大変だから連れ合いが亡くなった後、1階の部屋に引っ越した。週3日も医院通いをしている。ヘルパーにも来てもらっていたが、中々思うようにならないので、いまはもう頼んでいない。そんな会話を交わしていると、まるで母と話をしているような錯覚さえ覚えた。
 それにしてもこの数年、お年寄りを見かけると声を掛けることが増えてきたような気がするのはやはり歳のせいだろうか。

他人の店の経営状態が気になる

 お節介もちょっと間違うと要らぬ世話になるが、もしかすると「怪しい」人物と見られていたのは随分前からかもしれない。というのも、お店で店長や販売員を捕まえてはよく尋ねるのだ。
 某スーパーに行った時のこと。夕方4時過ぎだというのに客の少なさが気になり、近くの女性販売員を捕まえて質問した。
「今日はちょっとお客さんが少ないような気がするが、最近はこんなものなの?」
いきなり客からこんな質問を浴びせられ、困惑した顔をしながら「さあ、私にはよく分かりません」と交わされた。
 もう少し権限を持った人間でないと答えられないかもしれないと思い、今度は年配男性を捕まえ、先程と同じ質問をしてみた。
「少ないですかね。でも、こんなものじゃないですか」
「えっ、そうですか。でも、夕方の時間帯ですよ。以前はもう少し多かったように思ったけど・・・」

 もし、本当にこの状態が当たり前だとすれば、これは大変なことだ。経営再建どころか再度経営危機に陥るのではないか。それにしてもここまで集客が落ちている原因はなんだろう、と思いつつ、食品売り場をウロウロしながら他の男性を見つけ同じ質問をしてみた。
「近くに『木の葉モール』がオープンしたから、その影響です。どうしてもしばらくはお客さんを取られますね。早く戻ってもらえるといいんですが」
 なるほど、これで納得。だが、ちょっと待てよ。2人目の男性の頼りない答え方は、もしかするとこちらを怪しい人物(業界の人間)と警戒したからではないだろうか。やたら質問するのはよくないな、と少し反省。しかし、この悪癖は治りそうにない。

                                                    (続く)

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