西山ファームの投資詐欺をはじめ激増している詐欺メール(1)


栗野的視点(No.752)                  2021年10月22日
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西山ファームの投資詐欺をはじめ激増している詐欺メール
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 コロナ禍で自宅にいる時間が長くなると色んな情報が舞い込んでくる。営業や勧誘電話に選挙関連のアンケート電話に各種メール。怪しげなメールもあれば、おいしそうな儲け話もあり、収入減の時に楽に儲かる話に飛び付きたくなるかもしれないが、おいしい話には裏がある。檻の中に入って後悔するか、入る前に踏み止まるか。

 そんなことは言われなくても分かってると怒られそうだが、分かっていても簡単に引っかかるみたいで、「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」の被害者は後をたたない。投資詐欺の被害者が皆、欲の皮が突っ張っていたわけではないだろうが、ネット全盛の時代でも古典的な手法で騙されているのをみると、人間は楽に儲かりそうな話に乗りやすいのだろう。

 最初のハードルが高い話には人は乗って来ないが、初期投資が少なくて、一見リスクが少なく、なおかつ後ろめたさも少ない話には乗りやすい。
 マルチ商法は実際の商品がは動くこともあるが、ほとんどは商品の移動がなく、移動するのは数字だけ。自分が何人勧誘したか、勧誘した相手がさらに何人勧誘したかで自分の取り分(収入)が増える仕組みになっている。
 実際の商品もカネも現実的には(リアルの世界では)動かないので罪悪感も少ない。つまり一見リスクがないように見えることが、この商法が廃れない所以だろう、古典的な詐欺商法にも関わらず。

観光農園を使った投資詐欺

 最近ニュースになった観光農園「西山ファーム」(岡山県赤磐市、破産手続き中)の投資詐欺事件も手法は古典的だ。にもかかわらず、被害額が分かっているだけでも133億円に上っている。なぜ、それほど多くの人がいとも簡単に騙されたのか。
 そこには2つのこと挙げられるが、そのことは後ほど触れるとして、最初この事件を耳にした時、観光農園と投資詐欺が結び付かなかった。
 赤磐市というのは平成の大合併で周辺の郡部が合併して生まれた市で、岡山市に隣接し桃やブドウの産地として知られている。春には桃畑がピンク色に染まった景色が広がるので、私も写真を撮りに行ったこともある。
 一見、詐欺とは関係なさそうに見えるのどかな田園地方でなぜ投資詐欺が、と思うが犯罪に都会も地方も関係ないのが昨今の特徴。

 詐欺の手口は完全架空投資話で概略次のようなもの。
果物が海外(香港)で人気なので販路を海外に拡大している。
西山ファームからクレジットカードで商品を買ってくれれば、その商品を海外で同社が転売し、出資者(商品を買った人)に配当金を上乗せして(3%)還元する。購入者(出資者)は商品(果物)を受け取らない。

 こんな怪しげな話によく乗るものだと思うが、西山ファームは地元でもよく知られた観光農園で、創業者は真面目に農園経営をしていたようだし、実際にちゃんとした農園もあるので、現地まで見に来た人でも信用してしまうのだろう。
 それにしても、なぜ投資詐欺に手を出したのか不思議だったが、2018年暮れ頃からすでに怪しげな噂はあったようだ。
 その一方、売り上げは2016年から急増している。
 2015年12月期実績 1億2000万円
 2016年同実績 15億8000万円
 2017年同実績 36億8000万円
 2018年は100億円超を予定していたようだから、ほぼ倍々ゲームで伸びている。この数字を見る限り投資詐欺を働かなくても大丈夫なように思える。ただし、同社ホームページ(HP)の内容を信じればの話だが。
 結果として投資詐欺事件に手を染めたわけだからHPがいかに信じられないかという見本みたいなものだ。

 売り上げの急増と並行して東京や香港に拠点を出しているが、この急展開はリスクがありすぎる。それも2018年に集中し過ぎており、前年に売り上げが36億円とその前年から倍増したとしても、この程度の売り上げで1年に5箇所も展開するのはまともな経営者のすることではない。

 2018年3月 東京オフィス 開設
 同年3月 香港に現地法人Nishiyama Farmを設立
 同年7月 FRUIT HOUSE 本店オープン
 同年8月 FRUIT HOUSE HongKongオープン
 同年10月 FRUIT HOUSE 問屋町テラス店オープン
 2019年3月 フルーツピクニック原宿表参道店オープン
 2019年4月 Parlor MOMO Hong Kong オープン

 大体、企業(ベンチャー企業を含む)が倒産するパターンは売り上げが急増したり、企業規模を急拡大している時が多い。
 同社もご多分に漏れず2018年に急拡大しているのが分かる。リスクが高まるのは海外拠点や東京進出など傍目に勢いがると見られる時期。果物生産農家が東京に事務所を構えたり原宿表参道に店舗を出した時点で転落への道をまっしぐらに突き進んでいるのはちょっと考えればすぐ分かる。

 東京進出や海外進出を全国展開、グローバル化と言い換えようと、傍目の派手さが好きな色気の多い経営者が成功した試しはほとんどない。これに若くて、見てくれのいい秘書や、若くて人気があるタレントを使ったコマーシャルをすれば、その会社はほぼ間違いなく倒産する。西山ファームが若くて見てくれのいいタレントを使ったCMを流していたかどうかは知らないが。

 不思議なのは果樹園経営を地道にやってきた創業者がなぜ東京や海外進出に色目を示したのかだが、その頃、経営を主導していたのは40歳そこそこの副社長のようだ。彼が投資詐欺の首謀者で、同社の幹部4名も加担していたとのこと(新聞報道によれば)。創業者と息子の副社長は血の繋がった親子ではなく、離婚した妻の連れ子で、義理の息子とのこと。
 なぜ彼を副社長にしたのか、社長、副社長の関係は良好だったのか、仲が悪く実権を副社長が握っていたのかそうではないのかなどは報道からは伺い知れないが、詐欺事件の中心人物5人がいずれも40歳か40歳前で、被害者の大半が20代の若者と聞けば納得できる。
 この年齢の若者は昔はやったマルチ商法をよく知らないし、現金のやり取りではなくスマートフォンによる決済などに慣れており、金儲けにしろ支払いにしろ現ナマをやり取りしないからリアル感が乏しく、その分罪悪感も薄く、深く考えず楽に金儲けができるアルバイト的な捉え方をしているようだ。
 つまり40歳そこそこの若い連中が、さらに若い20代をターゲットにした投資詐欺事件というところに、この事件の特色があり、いとも簡単に「儲け話」に釣られ、被害額が133億円超になっていった。
 昔から、うまい話には裏があると言われているが、デジタル時代になってもこの言葉は的を射ているどころか、デジタル時代の方が人は騙されやすいと言える。
                              (2)に続く

 


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