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 ニコンが消える日〜海外2000人削減でも生き残れない(3)
ニコンに残された時間は少ない


参入が遅かったミラーレス市場

 まとめよう。ニコンはカメラを中心とした映像事業の売り上げが2016年度以降右肩下がりに下がり、19年度には半分以下にまで下がり、ついに海外従業員2000人の人員整理をせざるを得ないところまで追い込まれた。
 今年度の売り上げはCOVID-19による外出自粛、海外ではロックダウンの影響で売り上げはさらに下がることが見込まれる。
 国内需要は緊急事態宣言解除後に売り上げが若干戻りつつあったが、そこにまたまたCOVID-19の感染拡大による自粛で、本来稼ぎ時の年末商戦が期待薄。

 一方、精機事業は主要取引先のインテルが奮わず、こちらの売り上げ増も期待できない。まあ精機事業の売り上げは2016年から微増で来ているから、ほぼ横這いと考えてよく、映像事業に代わるニコンの柱になるのはもう少し先である。

 結局、同社が頼るのは報道関係などの高額・高性能カメラを買う一部プロとそれに続くハイアマチュアと呼ばれる層だが、この層は高齢化していき、若い世代が同じように「ニコン神話」を持っているかと言えばかなり疑問である。むしろ若い層はソニーのミレーレスの方にブランド力を感じるだろうし、性能的にも積極的にニコンを選ぶ理由はない。
 ではハイアマチュア層はどうか。この層は従来ニコンを支えた顧客層だが、年齢的には団塊世代中心以上。すでに現役を離れつつある世代で、彼らが現役時代のようにカメラを買い替える可能性は少ない。
 要はニコンを支えてきた顧客層は高齢化しつつあり、この層を対象にしている限りニコンの未来はないと言える。

 次に今後のカメラ市場を支える若い世代はどうか。彼らはファインダーを覗く撮影スタイルより背面の液晶画面を見ながら写真を撮るスタイルに慣れ親しんでいるから、圧倒的な差がなければミラーレスカメラの方を選ぶだろう。そしてその場合はソニーのフルサイズが第1選択肢で次にキャノンだろう。
 結局ここでもニコンはミラーレス市場への本格的参入が遅れた分だけ3番手に甘んじる以外にない。

ニコンに残された時間は少ない

 最後に最大の要因はカメラ市場そのものの縮小である。この市場が今後盛り返す要因は全くない。フィルムカメラやレコード盤がそうだったように、一部マニアを相手にした市場としてなくなりはしないだろうが、何社もが生き残れる市場ではないし、その市場でニコンが残ったとしても同社全体が生き残れるほどのキャパシティーがあるわけではない。

 となるとニコンの未来はどうなるのか。同社が生き残る道はカメラに代わる新たな事業にかかっているが、今日明日に代われる事業はない。残念ながら精機事業は柱になるほど育ってないし、何より最大お得意先のインテルの勢いが削がれている。ヘルスケア事業は今後の有望分野だが、内視鏡でオリンパスに取って代わられるかというと、オリンパスに1日の長があり、そう簡単にはいかないだろう。

 ニコンに残された時間は恐らく後1年。馬立社長が言う「21年度の黒字化」が達成できるかどうかにかかっているが、同社を取り巻く環境を見る限り、かなり難しいと言わざるを得ない。
 果たしてニコンは生き残れるのかーー。どういう状態であれ「ニコン」ブランドは残るだろうが、ニコンという会社が現在の形のままで存続しているかどうかは疑わしい。いくつかのシナリオが考えられるし、すでに水面下では資本提携相手を探っているかもしれない。ただペンタックスがリコーの傘下になったように国内同業他社が手を差し伸べる余裕はないだろう。とすれば海外メーカー? 気が付いた時には中国企業の傘下になっていたというシナリオは十分あり得る。



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