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ミネルヴァのフクロウは飛ばない。(2)


 この星の過去にいまとは異なる、そしてはるかに高度な文明が存在していたことは数々の遺跡が示すところだ。だが、それらは物言わぬ遺跡の形でしか我々に語りかけない。なぜ滅びたのか、どのような文明がいつからいつまで存在したのか。
 言えることはただひとつ。どのような文明も爛熟した後に待っているのは崩壊だけだということ。そこでは倫理もモラルもタブーもなくなり、人々は享楽のみを追い求めるようになっている。

 現在(いま)がそうではないと言い切れるだろうか。世界は団結、連帯より、小さなナショナリズムでまとまり、他集団を批判、排斥し、消滅させることすら考えている。
 人を救うことが目的の宗教が、その名の下に他教、他派を攻撃し、問答無用とばかりに殺人を行う。「聖なる戦い」という名の下に。
 「ジハード」と言おうと「ポア」と言おうと、「十字軍」と言おうと、やっていることは皆同じ。宗教の名の下に行われる殺人である。人々を救うはずの宗教が、殺戮をし、この世を地獄にしているのだから、なんとも皮肉である。

 我々はどこから来て、どこへ行くのか−−。どこから来たかは分からぬが、どこへ向かっているのかはいまはっきり分かる。この先で待っているのは滅亡という淵だ。
 現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)が滅亡し、新たな生物(それは新系譜の人類とは限らない)がこの地上に生まれるかもしれないし、そうでないかも分からない。
 言えるのは我々を取り巻く地球環境そのものが異変を告げているということだ。4年前以降、日本列島各地で地震が相次ぎ、火山が噴火し始めている。ポンペイを一瞬にして死の町にした火山のような大噴火が起こらないとは誰も言えないだろう。

 ノアの箱舟伝説に似た話は世界各地に残っているが、東北大震災とその直後の津波を経験した後では、これら大水害による人類の絶滅話を単なる寓話と笑い飛ばすことはできない。地球温暖化は海水の上昇につながり、いま水没の危機に遭遇している国・地域も実際に存在している。
 「神」の存在を認めるわけではないけれど、我々現生人類が奢りすぎだということは認める。まるでこの星の王のように振る舞い、自らを「神」と思い込み、「成長」という名の下にこの星を掘り返し、資源を使い尽くし、自然界に存在してないやっかいな代物まで創り出してしまった。これこそ未来のエネルギーと礼賛して。結果はどうか。処分も廃棄も消滅させることもできず、扱いに苦慮している。
 さらには生物の創造、クローンの製造までなそうとしているのは明らかに「神」の領域への侵犯。そこまで驕り高ぶり、自らを「神」に替わる存在となそうとしていることに危機感を持った「自然の摂理」が働き、揺り戻しを行おうとするのは当然だろう。それが「異物」の排除に働く行為であっても、この星を守るためには。

 種が「共食い」を始めると最期の段階に差し掛かっていることを示している。近い将来に存在していない可能性が極めて高い絶滅危惧種である。いまホモ・サピエンス・サピエンスは間違いなくここに分類されている。
 方舟に乗れるものはいるのか。それとも根絶やしにされるのか。残された道は「自然の摂理」の中で生きるかどうかだ。驕り高ぶり、資源を食い尽くす「成長」路線を取るのか、縮小均衡、身の丈にあった生活をするのか。拡大路線に突っ走った旧世代より、「無欲」と言われる新世代の若者の方が未来を見通しているのではないだろうか。
 最終章を前にして、その現実を認めるのか否か。ミネルヴァのフクロウは飛ぶのか飛ばないのか。この星のためには飛んだ方がいいのか、飛ばない方がいいのか・・・。


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