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迷走する政治(3)
〜希望の党に希望はあるか


 「股はくぐらない」。真っ先に泥船から逃げ出した、一時、路チューで有名になった細野某から「三権の長だった人は遠慮してもらいたい」と、露骨に新党への合流を拒否された首相経験者の一人は言って除けた。股はくぐらないとは「韓信の股くぐり」の故事を意味しているのは説明するまでもないだろう。

 それにしても民進党所属議員がここまでいい加減というか節操がない、理念がないとは正直思わなかった。船が沈没しかけた時に、船長はもちろんのこと責任ある立場の人間がすべきことは乗員を避難させ、被害を最小限に留めた後に自分達も避難するのが常識。仮にも代表代行の立場に立っていた人間が仲間を見捨て、いの一番に逃げ出すとは世も末だろう。
 そういえば代表代行に続けとばかりに次々と他船に乗り移ったのも党の重要な役職に就いていた連中ばかり。こんなにも簡単に仲間を見捨てる政治家に国の将来を託せるだろうか。私はゴメン被りたい。仲間でさえこれだから、国民のことなど、それこそ「さらさら」考えないだろう。

 さて「希望の党」代表の小池百合子氏だが、その前に以前「栗野的視点」で書いた「権力に擦り寄る女達が見せたパフォーマンス」http://www.liaison-q.com/kurino/performance.html)を再読して戴きたい。

 政治情勢は刻々と変化しているが、この数日で「希望の党」から急速に「希望」が消えつつある。消えているのは「希望」だけではない。小池都知事の衆議院選出馬の可能性も併行して消えつつある。
 都議選で風が吹いたのは既存政治への不満の受け皿になったからてある。しかし、都知事になってからの小池氏は築地市場の豊洲への移転見直しも五輪会場の問題も何一つ「リセット」できなかった。
 まあ、これは当初から予想できたことだが、結果は大山鳴動して鼠一匹。彼女に新しさ、変革を期待した人は見事に「希望」を打ち砕かれた。
 昔から当て事と褌は向こうから外れると言われるが、当て事を希望と置き換えてみるといい。例えばアメリカ大統領に就任直後のオバマ氏やアウンサンスーチへのノーベル平和賞授与。前者は期待値だけで授与したが結果はどうだったか。本来、過去の業績に対して与えられるものを結果どころかスタートラインに立って観客に手を振った段階で与えるから、こういうことになる。
 後者は軍政により長年自宅軟禁下にあったというだけで授与し、彼女の独裁的傾向を見抜けなかった、というか、それに目を瞑った結果がロヒンギャへの虐殺を許した。彼女が自らを「大統領の上におく」と語った段階ではっきりと悟るべきだった。

 政治は「裏切り」と「騙し」とは言え、当選するための方便がこのところ多過ぎる。今春、鹿児島県知事選で当選した元テレビ朝日記者の三反園訓(みたぞのさとし)氏は選挙戦で掲げていた「脱原発」は口にしなくなり、最近では原発容認に傾いている。ジャーナリストにしてからがこれだ。いわんや政界渡り鳥と化し、主義主張、政策が異なる政党を選挙のためだけに移る議員おや、だろう。

 ところで小池知事、衆議院選に出るのか出ないのか。ズバリ申し上げて私は出ないと読んでいる。
 根拠は以前にも書いたが、彼女は「権力と寝たがる女」だからだ。総理の椅子が手に入らなければ(狙えなければではない)出馬しないだろう。
 築地市場移転問題の際に見せた手はもう使えない。焦らすだけ焦らせて、最後は様子見、風向きで判断に有権者が乗るほど甘くはない。
 いま希望の党と小池氏に吹いているのは追い風ではなく、向かい風。そしてその風を吹かせたのは他ならぬ小池氏自身である。

 かくして息も絶え絶えだった東の権力者にトドメを刺すどころか逆に立ち直らせてしまった。その戦犯は小池百合子と前原誠司の両氏。
 個人的な感想を言えば、口元が歪んでいる人物は顔相的に信用できない。本当のことを言っているとは思えない。
 ただ、前原氏が歴史に残るのは間違いない。民進党を消滅させた男として。民主党政権を終わらせた影の男という称号も上げてもいいかもしれない。小沢か反小沢かで党内を二分させ、政権の弱体化を招いた張本人なのだから。
 小沢一郎の考えにじっくり耳を傾け、小沢を御するだけの力量がある人物が当時の民主党にいれば、民主党政権が短命で終わることも、ここまで悪し様に言われ、嫌われることもなかったのではと思うが、好意的過ぎるだろうか。

 最後に一つ腑に落ちないことが。「名を捨てて実を取る」前原氏の戦術、あれを授けたのは小沢一郎氏ではないかと考えている。というのも前回選挙の際、自党の候補者に、「まず生き残ることを考えろ。そのためには民主党で出馬してもいい」と言い、実際その通りにして当選した議員もいたのだから。
 その戦術を前原氏に授けたと思われる小沢一郎率いる自由党と希望の党の合流話がほとんど話題に上らないのは、希望の党内の旧民進党出身議員に小沢アレルギーが相変わらず根強いからなのか。
 まるごと合流の一本化ではなく、連携し候補者を一本化して戦うオリーブの木戦術を取っていれば、ここまで野党がグジャグジャにならなくても済んだのにと思うが。
 いずれにしろ毎回、選挙の度に思うことだが、この国には統一戦線という考えはないようだ。選挙民を含め、もう少し成熟する必要がありそうだ。
                                              2017.10.2

デル株式会社


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