デル株式会社

 


「地域商店街から店舗が消える(1)
〜「靴を売らない不思議なクツヤ」が閉店した理由


「靴を売らない不思議なクツヤ」が閉店した理由

 この日は土曜日の朝ということもあり、いつもの時間より遅い朝9時過ぎからウオーキングに出かけた。コースはいつも決まっているわけではなく、ちょっと離れた公園に出かけることもあれば、川沿いに歩くこともある。
ただ、この日は少し汗をかく程度のウオーキングというよりは散歩感覚で地元商店を眺めながらのブラブラ歩きだったが、交差点に差し掛かった時、向かい側の靴屋のシャッターに「完全売りつくし」の貼り紙がされているのが目に付いた。

 この靴屋、「靴を売らない不思議なクツヤ」をキャッチフレーズにしている。靴屋が靴を売らなければ閉店して当然。靴を売らなくて何を売っているのか、と不思議に思われるかもしれないが、同店が売っているのは「靴」ではなく「履く楽しさ」。
 売り上げとか効率経営ということから考えれば、住宅地の立地ということからも普段履きや価格の安い普及品、あるいは小中学校生向けの靴を売った方がいいかもしれない。ただ、そうした靴は量販店と競合し、価格競争に巻き込まれる。売ればいい、という商売はしたくない。真にお客様のことを考え、その人にピッタリ合った靴を売りたい。シューズフィッターなどという言葉もない時代から、同店はそういう売り方をしてきたのだ。

 でも結局、閉店に追い込まれたわけでしょ。マーケティング無視の、時代の流れを無視した売り方をするからだ、と思われるかもしれない。だが同店の閉店理由はそういうこととは別のところにあったようだ。
 地元のコミュニティー紙に載せた「閉店セール」の案内広告に次のように書かれていた。

 「明治創業の祖父から大正、昭和、平成と、父、兄、私にバトンを繋いできましたが、つい先日の12月末、当店の長年の主力老舗仕入先が、相次いで倒産と福岡支店閉鎖となりました。驚くとともに時代の大変革を感じさせられ、私の年齢と後継者がない状況もふまえ完全”店じまい”を決断いたしました」

 店主の年齢は知らないが、70代以上だろうと思われる。負債を抱えての閉店ではなく、仕入先が倒産、閉鎖に追い込まれたためで、それならこちらも荷物を下ろすかというような、どこかサバサバした感じを上記の文章から受けた。見慣れた街の風景が来月から少し変わるのは寂しさを覚えるが、「お疲れ様でした」と店と店主に声を掛けたい。
 見慣れた街の風景が変わるといえば、この1年の間に地域の商店通りから相次いで店が消えている。好景気と言われているのに、なぜ地域商店は閉店していくのか。

減速局面に入った世界経済

 巷に「アホノミクス」、いや間違えた「アベノミクス」という言葉が躍り、景気がよくなり、様々な業種で人手不足が言われている。しかし、社会の片隅でひっそりと生きている私などは一度もその恩恵を受けたことも感じたこともない。
 世の中本当に好景気なのか、と思うが、どこで尋ねても人手不足は間違いないようで、「従業員・パート・アルバイト募集」の貼り紙もよく目に付く。そして行きつけのスーパーや田舎のコンビニでさえレジの顔が女子高校生に変わっているのを見れば、人手不足の影響はこんなところにまで及んでいるのかと考え込んでしまう。

 考え込んだのは人が流れた先がよく分からないからだ。一体、彼、彼女達はどこへ流れたのか。流通業から製造業へ移動したとはとても思えない。大多数はやはり同じ分野内での移動ではないかと思えるが、第3次産業も変動、浮沈が激しいし、その一方で相変わらず引きこもりや無職というか働いていない人の数は一定数あるようだし、そんなことを考えれば、一体、人はどこへ消えてしまったのか不思議でならない。

 どうも私の体も頭もいまやすっかり時代遅れで、昨今の現象を説明することすらできなくなっている、と悲嘆に暮れていたら内閣府が景気をこれまでの「足踏み」から「下方への局面変化」に引き下げた。同じ頃、アメリカの雇用の伸びも予想を大幅に下回ったという報道がなされた。
 そこにもってきて、いままで世界経済を引っ張ってきた中国の経済減速だ。先頃開幕した全国人民大会で李克強首相はいつものように経済成長率目標を高らかに謳うどころか、前年の「6.5%前後」から「6〜6.5%」へと引き下げたばかりか「激闘の準備をしておく必要がある」とさえ言い放った。
 中国のバブル経済崩壊はここ数年、指摘され続けているが、最悪、ハードランディングが起こりうるということを中国首脳部が暗に認め、それに備えよ、と全国人民に呼びかけたわけで、日本だけ「アベノミクス」で好景気が続いているという認識はありえないだろう。
 何分、基礎になる統計数字が操作されており、信頼できないのだから「アベノミクス」で好景気という話は随分怪しい。ひょっとして「アベノミクス」という造語は霞が関か永田町だけで飛び交い信じられている言葉で、同志社大大学院教授の浜矩子氏が言う「アホノミクス」こそが正しい言葉ではなかろうか。
                                               (2)に続く

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