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ホモ・サピエンスは滅亡に向かっているのか(T)〜環境編(1)
異変を敏感に感じとる小さな生物たち


栗野的視点(No.773)                   2022年8月22日
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ホモ・サピエンスは滅亡に向かっているのか(T)〜環境編
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 この星を取り巻く環境が、少なくとも直近の10年で急激に変化していることは誰もが認めるところだろう。欧米では猛暑による山火事が相次ぎ、40度を超す気温が記録され、日本でも8月1日、福井県小浜市で39.1度を、2日には埼玉県越谷市と甲府市で39.5度を観測するなど観測史上初めてという猛暑、高温、熱波が北半球を襲っている。

 昭和40年代までは30度を超えると猛暑と言っていたが、今や30度は「ちょっと涼しい」と思える程。問題はこうした気温が1、2日ではなく、ここ数年続いていることだ。しかも、年々地球は熱くなっている。そのことが各方面に様々な問題を引き起こしている。

 こうした環境異変がこの星と、そこで生存する生き物たち、とりわけホモ・サピエンスにどのような影響を与えるのか。

異変を敏感に感じとる小さな生物たち

 変化(異変)はいつだって最初は小さなことから起きる。次に少し顕著な形で現れ、やがてそれが常態化してくる。この段階に来れば大半の人が「異変」を意識し「異常」を止めようとする。
 現在は3段階目の常態化に差し掛かっている、あるいはその只中にあると言っていいだろう。

 変化を最初に感じるのは小さな生き物たち、弱い生き物たちである。それ故、小さな生き物たちの動きを注視することが変化の兆しを掴むことになる。
 例えば昨年から今年にかけて顕著に見られたのが桜やひまわり、コスモス、彼岸花といった植物の開花で、例年より1週間から10日早く咲き、満開になったと各地で報告されている。
 ひまわりやコスモスは種蒔き時期に左右されることもあるが、自生の桜や彼岸花といった植物は環境の影響を大きく受けるし、生物の異変は世界各地で10年以上前から報告されてきている。
 それらを以下に列挙してみよう。

 1.2002年、2004年、2005年秋、米フロリダ、ルイジアナ、テキサス州近辺で蚊が大量発生し、鹿や馬、牛などの家畜が大量死した。2004年に報告されただけでも牛400頭が蚊に刺されて死んだというから甚大な被害だ。
 原因は夏に各州を襲ったハリケーンの後に発生した大量の蚊だというが、近年、ハリケーン、台風による被害が増えている点も見過ごせない。

 2.野生動物の住宅地への出没が激増

 鹿はもちろんのこと、最近増えているのが猿の住宅地への出没だ。
「仏壇の前に人影がすると思い近付いてみたら猿で、お供物をサーと取って逃げて行った。もう怖くて開けっ放しにできないんです」
 そう語ったのは私の実家近くの老婦人。人里離れた民家ではなく、民家が何軒もある集落で、すぐ側を結構交通量が多い国道が走っている場所ですら、この有様だ。
 猿の出没は最近至る所で目撃されている。数年前、都会の住宅地で目撃された時は「迷い猿」という風に報道されたが、その後、各地で目撃情報が増えてくると「迷い猿」とは言えないし、群れからはぐれた猿ではなく明らかに目的を持って住宅地に現れてきていると言える。

 農作物への被害という意味では鹿とイノシシで、獣害被害を防ぐために田畑を電柵で囲うのは今では当たり前の風景と化している。田畑への侵入を妨げられた猪鹿は大人しく山に帰るわけではない。他で食料を確保しようとし住宅地へ出没する。イノシシの子供を見て「ウリ坊」などと喜んでいる場合ではないだろう。
 鹿の数は全国的に増え続けており、30年間で8倍になっているという。私自身、福岡県でも岡山県でも鹿に何度か遭遇している。いずれも山奥ではない。前者は町役場近くの川沿いだし、後者は朝のウォーキング中で、目の前を鹿が過った時は驚いた。

 猿や鹿の出没と聞いてもさほど驚かれない人でも、これが熊となれば別だろう。熊の出没は10年ほど前から確認されているが多くは里山。しかし、民家の中やショッピングセンター内(石川県加賀市)となれば話は別だ。
 兵庫県宍粟市一宮町能倉(よしくら)では2016年だけでも熊による50件以上の人身被害が起きている。たしかに同市能倉地区は私も訪れたことがあるが、少子・高齢化が進んでいる地域ではある。それにしてもこの数は異常だろう。しかも、一度は路上で襲われ頭を噛まれる被害に遭っている。

 問題なのは熊の出没域が奥山から里山、さらには住宅地へと広がっていることだ。生息域も西へ拡大し、従来ツキノワグマが目撃されたことがない西日本地域での目撃情報がこの10年余りで増えている。
 理由はいくつか考えられる。
 1つは過疎・高齢化による耕作放棄地の増加と里山の人口減少。それにより熊や鹿が人間を恐れなくなったのだ。
 もう1つは残飯や畑の野菜の味を覚え、それらを求めて人里近くに出没し出した点。一度味をしめると、山のドングリなどに飽き足らなくなり、住宅地にまで降りてきて残飯を漁り出す。
 3つ目は山に彼らの食物が不足し、食料を求めて活動域を広げる例だ。

 背景にあるのは人間の勝手な行動。鹿や猪、熊の棲み処だった場所を開発して入り込み、彼らをさらに奥地に追いやっただけでなく、開発で林や森をなくし、彼らの生息地を奪ってきた。
 ところが今、それらの開発地が放置され、荒れ放題になっている。人の手を離れた自然が元に戻るのは当然だが、一度人の手で開発された自然は多彩な植物が生えていた元の自然に戻ることはない。
 こうした環境の変化で野生動物の住宅地への出没が増えているし、今後も減るどころかますます増えていくだろう。

 3.相次いで見つかる深海魚

 変化は山だけではなく海でも見られる。深海魚は文字通り200m以上の海底に生息する魚類のことで、それらが網にかかったり、浜辺で見つかることはない。
 ところが、20年程前から結構目にするようになった。特に報告が多かったのは2014年で、山口県から石川県に至る日本海沿岸の広い範囲でリュウグウノツカイ、サケガシラ、カグラザメ、ダイオウイカといった深海魚が相次いで見つかっている。
 原因は不明だが、彼らが生息する深海の環境が変わるなど、何らかの変化が起きているのは間違いないだろう。

 変化は深海だけではない。近年、一般魚の北上が見られるようになっている。日本列島周辺の潮の流れの変化によるものなのか、魚の北限が北上し、南で捕れていた魚が北で捕れるようになり、逆に北の海で捕れていた魚、サンマやイカが南下せず北で捕れなくなっている。
 日本列島近海を流れる海流が変化したのが一因だ。
                        (2)に続く


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ソースネクスト