低所得層は今後増えていく
日本でも年収200万円以下の層が確実に増えている。また「隠れ貧困者」も結構な数存在しているとも言われている。彼・彼女達が「隠れ」なのは親と同居し、親の年金で生活しているからだ。親は団塊の世代以上が大半を占めているだろう。それ以下の世代になると年金額が減少し、年金では生活できず生活保護に頼らざるを得ないだろう。
いずれにしろ同居している親が亡くなれば途端に無収入になる。実際、この層がどれほど存在するのか不明だが、結構存在しているのではないかと考えられるし、COVID-19をきっかけに勤務先の倒産・リストラ・雇い止めに遭い収入の激減、あるいは無収入になる人達が今後激増するに違いない。
例えば7月、三菱自動車は岐阜工場の閉鎖を発表したし、日産自動車もリストラを発表している。私はこの2社は生き残れないだろうと考えているが、その中にニコンも加えてもいいかもしれない。生き残れたとしてもニコンは大幅に事業を縮小せざるを得ないだろう。
今後、大企業を中心に事業の縮小、一部売却、工場閉鎖といった動きは増えると予想される。となると失業者はこれからかなりの数で増えていくだろう。それでもどこかで人員を吸収できればいいが、長期的には多くの企業が人員削減に動いていくため、その可能性は低い。
「リモート」が格差を広げる
人員削減の動きは以前から見られた傾向で、何も今回のCOVID-19がきっかけで始まったわけではないが、COVID-19がその動きに拍車をかけたのは間違いない。
もう一つの要因は「リモート○○」である。現在見られているような形で「リモート○○」が増えていくとは思えないが、それでも一定程度は導入されていくに違いない。
その時に格差が生まれる。リモートオフィスを導入できる企業、導入できない業種間格差だけでなく、経済力による個人格差も。
リモートオフィスは実際に導入してみるとメリットとデメリットの両面あることに気付くはずで、現在はメリットの方が強調されているが、しばらく後にはデメリットが言われ出すだろう。
リモートオフィスというカタカナ語に騙され、理想形を想像しているかも分からないが、理想的なリモートオフィスワーク、例えば安倍首相が「ステイホーム」でコーヒーを飲みながら愛犬を抱えて寛いでいた光景が一般人とはかけ離れた生活であるように、自分専用の1部屋を「オフィス」として確保できる人は限られている。
大体、子供部屋はあっても書斎がないのが世の大半のお父さんの現実である。勤務体制が変わったからと、急に書斎(リモートオフィス)を確保できるわけではない。結局、家族との共用スペース、それはリビングだったり食卓兼用のテーブルだったりするわけで、仕事に集中できる時間と場所の確保さえままならないだろう。
結果、それが仕事の「成果」に影響することにもなるし、上司にプライバシーを覗かれることにもなり、生活と精神の両面に影響が出ることは充分ある。
つまり、ここでも持てる者と持たざる者の差が出てくるわけで、「新しい勤務形態」に対応できない人は「仕事ができない」と見られないとも限らない。いや、そう見られていくだろう。その結果は言うまでもないだろう。
同じようなことは子供達でも言える。公立学校はタブレット等の端末を無料で支給するのか一部有料になるのか。私立校はどうなるのか。有料となれば、所有端末による差が出、それがイジメの材料になることもあり得るだろう。
結局、ここでも格差が生じていく。既に存在している格差の上に新たな格差要因が加わるわけで、格差は縮小するどころかますます拡大していくだろう。
ソーシャルディスタンシング(フィジカルディスタンス)が実は「ソーシャルディスタンス(社会的差別、心理的抑圧)」を生むということに政治家や官僚、メディアは考えをいたすべきだ。
どうしても「ディスタンス」という言葉を使いたいなら「フィジカルディスタンス(物理的距離)」という語を使うべきだ。世界的にも「ソーシャルディスタンス」と区別する意味で「フィジカルディスタンス」という語を使うようになってきているのだから。
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