まあ、そんなわけで次のかかり付け医を決め切らず年を越してしまったが、昨年12月頃から少し体調に不安を覚えることがあり、念の為とかかり付け医院に行き、尿検査と検便をしてもらうことにした。
診察室に座っていたのはいつもの女医さんではなくご主人だったのでちょっと驚いたが、ご主人は腎臓専門医で長年、日赤に勤務され部長だったが、定年退職後もあちこちに呼ばれることが多いみたいで、定年後はノンビリとはいかないようだが、この日は女医の奥さんが足を捻挫して階段の上り下りができない(1階が診療所で2階が自宅になっている)ので自分が代わりをしているとのことだった。
そんな雑談ついでに、4月以降、どこにかかるようにすればいいか悩んでいますと告げると
「今、家内が患者さん一人ひとりのカルテをまとめて、次にかかる医師のところに出せるように、その作業をしていますから、それを持って行ってもらえばいいと思います」
とご主人の医師から言われた。
「いや、それは大変な作業でしょう」
「そうですね。長く来られている患者さんが多いから、1人分のカルテも結構あり大変だと言っていました」
大病院なら電子カルテだからCDにコピーして渡すだけで済む話かもしれないが、個人医院は手書きカルテの所が大半だろう。特に年配医師は。
しかし、デジタルが常に有利とは限らない。今回の石川県能登半島地震のような大災害時には逆にデジタルは全く役に立たないことがある。パソコンは壊れて使い物にならないかもしれないし、停電したり電話回線が使えなければデジタル機器はガラクタ同然。むしろアナログ、手書きの紙カルテの方が役に立つし、ホームドクターならカルテを見るまでもなく患者の持病や必要な薬をちょっとした会話から思い出し処方できる。
もちろん大病院には大病院の役割があり、大きな外科手術などは町医者では器具や設備がなく難しいが地域の中核病院では可能だ。
今回の石川県地震でも倒壊を免れた町医者が奮闘したニュースも伝えられている。この種のニュースはもっと伝えられるべきだと思うが、大手メディアがあまり取り上げないのは残念だ。
私的な話になるが、2009年8月、兵庫県岡山県境を襲った豪雨災害で私の実家が被災した時、まだ私も弟もそれなりに若かったし従兄弟が大阪から駆け付けてくれたこともあり茫然自失という状態ではなかったが、現地入りし協力してくれたボランティアの人々や県内の保健所から派遣された保健師には本当に助けられた。
男たちは床上浸水した家の片付けに追われ母に構う暇はなかったが、保健師さんが母に寄り添い、被災直後の話の聞き役になってくれたことで母の精神状態が随分軽くなり、その間我々は片付けに集中することが出来た。
医師と患者の関係は病気や体調不良という問題を介して、診てもらう、治すという技術的なことで成り立っているのではない。精神面を含めたトータルケアこそが求められる。
我々の方でも医院を渡り歩くのではなく、掛かりつけ医をある程度決めておくことも大事になるだろうし、今回のような災害時に集団避難所などにいち早く入る医師や保健師、「国境なき医師団」のような組織を作ることが求められるだろう。
新たなホームドクター探しに悩みながら、そんなことを考えたりしていた。
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