なぜジーンズメーカーは相次ぎ経営破綻したのか。(5)
日本の製造業が抱えている課題、問題点〜


環境の変化に対応できなかった

 さて、市場が縮小している時に取る方法はいくつかある。
1.市場をもう一度拡大させるべく業界で努力する。
2.縮小市場の中で自社のシェアを拡大する。
3.市場の縮小に合わせてスリムな体制にする。

 どの業界でもまず考えるのが1の市場の再拡大だろう。
だが、一度縮小局面に入ったものを逆転させるのはかなり難しい。第一、従来と同じことをしていても拡大方向には向かない。にもかかわらず多くの企業が従来の延長線上でやろうとする。
 その結果せめて身の回りからでもと、購買奨励や愛用運動、さらには条例制定をしてまで愛用運動を進めることに。まあ自動車メーカーなども以前から取引業者に自社商品利用を「奨励」してきたから、いまに始まったことではないとも言えるが。

 ジーンズファッションはどんどん下流・下層へと行っている。下流に行ったものを、もう一度上流に引き上げるのは難しいように、従来の延長線上の戦略ではジーンズにかつてのような売り上げを取り戻すことは難しいだろう。
 ファッションをはじめブームになる物は、水が高きから低きに流れるように上流から下流へと広がっていくものだ。穴あきジーンズもファッションかも分からないが、それは言うなら下流・下層ファッション。そこに行き着いたものが、価格、品質、ブランド面でアッパー層に広がるはずもない。言い換えれば、その分野を手がけている以上、儲かるはずがないということだ。
 児島商工会議所のデニム制服もただ単にデニム生地で制服を作ったというだけならなんの意味も効果もないだろう。デザイン的にもファッション的にも優れ、デニムでもこんなに格好いいジャケットが作れるのだ、と思わせるようなものでないと。

 成熟段階に入った商品は「機能」や「性能」ではもはや差別化できない。
 いいモノを作れば売れるのではない。いいモノを作ってももう売れないのだ。
成熟段階の商品は「デザイン」や「カラー」「使いやすさ」で消費者から選ばれるのである。このことをしっかり認識すべきだろう。


 証券投資の失敗で200億円以上の運用損さえ出さなければ、エドウインは自力で十分生き残っていたはずだ。パイの食い合いをする相手が減って行ったのだから。
 パイを広げるか、パイの大きさが変わらなければ口数を減らすかしかない。口数が減れば残ったもののシェアは必然的にアップする。
 現在、流通業は生き残りに向けた最終決戦の段階に入っている。しかし、本当にそれがいいのか。それしか生き残る道はないのか。

 ところで、ジーンズ市場が縮小した原因は何か。ひと言で言えばファッションの多様化である。それまでジーンズファッションをリードしてきた文化が終わり、ファッションの多様化が始まったが、ジーンズメーカーはそれに対応できず、既存ジーンズの延長線上のジーンズを作り続けたことにある。
 ジーンズをリードしてきた文化とは、ジェームズ・ディーンやスティーブ・マックィーンのジーンズ姿にアメリカ文化への憧れがダブった時代。これはなにもジーンズに限らずコカ・コーラであったりポップスであったりもしたわけだが。
 さらに60年代後半からのヒッピー文化に代表されるようにジーンズは反体制の象徴と結び付き流行っていった。思えばジェームズ・ディーンやスティーブ・マックィーンが演じた世界は反体制の世界でもあった。
 こうした時代が終わり、ファッションからある種の政治色がなくなり、ファッションの多様化が始まると、ジーンズの売り上げは落ちていった。チノパンがブームになったのもその少し後ぐらいである。

 本来、ファッションの多様化が始まった時にジーンズメーカーも対応すべきだったが、一度成功体験があると転身がうまくいかないのはどの業界でも同じだ。
 三備地区のジーンズメーカーは元を正せば学生服の減少に危機感を抱いての転身だったが、二度目の転身には失敗したといえる。やはり人は持てるものが増えると、それを捨て去り、出直すことはできないようだ。
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