なぜジーンズメーカーは相次ぎ経営破綻したのか。(6)
日本の製造業が抱えている課題、問題点〜


時代は大から小へ向かう

 縮小する市場の中で取るべき3番目の方法は、市場の縮小に合わせてスリムな体制にすることだと前述したが、これは至極当然と思えるが、実は最も難しい方法でもある。
 いまさら説明するまでもないだろうが、パイが縮小しているのだから皆がそれに合わせて生産を縮小すればなんら問題はない。しかし、総論賛成、各論反対で、自分のところが生産縮小するのは嫌だと必ずなる。

 ここで取るべき方法は2つしかない。その市場にこだわり続けるか、市場より自らが持つ技術にこだわるかだ。
 多くの企業が前者の選択をしようとする。勝手知ったるなんとかで、それが一番無難と感じるのではないか。改善、努力はかなりしなければならないだろうが、それでも新市場に打って出るよりはリスクが少ないだろうと考えるからだ。
 一方、後者は市場より自社の技術を生かそう、生かせる市場を探そうとする。縮小市場を思い切って捨て、新市場に打って出るやり方だけに、ゼロからの出発とほとんど同意語で、当初は苦労するに違いない。それでも「江戸が勝つ(EDWIN)」「(米国の)ボブに損をさせる(BOBSON)」という野心を社名、ブランド名に込め、本場で勝負し、日本製ジーンズのすばらしさを認めさせてきたように、しっかりとした技術と、それを生かす方法を考えれば新参者でも市場を切り拓くことができる。いわゆる技術の横展開である。
 もちろん、そのためには自社のコア技術が何かを知ることと、その技術が秀でていることが必要である。どこにでもある並技術しかなければ、どちらの市場にいても生き残るのは難しい。
 敵を知り己を知れば百戦危うからず、とは孫子の兵法の基本だが、要は「己を知る」ことである。「敵を知ること」の方に重点があると勘違いしている企業経営者が多いが。

 縮小市場を捨てるとは、環境に適応するということと同意語である。
ただ、留まろうと新市場に転身を図ろうと、重要なのはスリム化を図ること、量を追わないことだ。
 デジタル化が日本のモノづくりを衰退させてきた、とは過去何度か述べているが、デジタル化は大量生産を用意にしてきた。その結果、市場にモノが溢れるようになり、技術、商品の同質化が急激に進んできた。
 ここにこそ問題の本質がある。大量生産が商品・市場の同質化を招き、どのメーカー・小売店の商品も似たような商品になり、やがて売れなくなっていく。
 大から小へ、がこれからのトレンドになる。小市場にこそ商機(勝機)がある。そのことはまた別の機会に触れることにするが、ジーンズ市場で言えば「桃太郎ブランド」がいまのところその1例に当てはまりそうだ。ただ、売れ出して大量生産に舵を切ると先達の轍の後を辿ることになるだろうが。
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