低価格ジーンズに負けた?
低価格ジーンズに負けたのが原因、とする説は多い。たしかに2009年3月、ユニクロの低価格店「ジーユー」が売り出した990円ジーンズは衝撃だった。実物を見て私は履きたくないと思ったが、それまでのジーンズに比べて「ケタ違いの安さ」である。少々のことなら我慢できる。そう考えて買った層は多かったに違いない。実際、私が見に行った時にはほとんどのサイズが売り切れていた。
その後、イオンなどの大手スーパー各社やディスカウントストアのドン・キホーテなども1000円を切る激安ジーンズを相次いで投入したから、既存ジーンズの売り上げに影響が出なかったはずはない。となると、低価格ジーンズに負けたのが原因という説は当たっているかもしれない。
だが、ちょっと待て。ビッグジョンの売り上げピークは1993年である。同年1月期に182億円あった売り上げは2013年1月期には25億円までダウンしている。しかも2007年1月期からは最終赤字が続いていたのだ。
激安ジーンズが市場に投入されたのが2009年3月だから、少なくともビッグジョンの不振は激安ジーンズのせいではないといえる。
ボブソンが営業権を投資ファンドに譲渡したのは2009年。やはり激安ジーンズの影響を受ける前から経営不振に陥っていたわけだ。
ただ、1000円を切る激安ジーンズの影響は受けなくても、ユニクロはそれ以前からジーンズを販売していたから、そちらの影響があったといえなくもない。既存ジーンズメーカーの販売価格は6000〜1万円。対してユニクロは3990円。これだけ見れば価格戦略で負けたといえるかもしれない。
しかし、ジーンズ専門店のライトオンなどではすでに4000円前後でエドウイン等が販売されていたから一概に価格面で負けたのが経営不振の原因とは言えない。
だが、市場が縮小していく中で価格競争に負けた、ということはできる。そう考える人もいるだろう。
たしかにジーンズ市場は縮小していると先述した。しかし、それは日本ジーンズ協議会に加盟しているメーカー売り上げという注釈付きである。実はユニクロ等は同協議会に加盟していないから、ユニクロ等の売り上げはカウントされていないのだ。結局、縮小したのは既存ジーンズメーカー市場のみといえる。
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