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国難時にトップ交代は是か非か(1)


この国を覆う無責任体質

 政局が揺れている。
野党が内閣不信任案を本当に提出するのかしないのか、不信任案は通るのか通らないのか、民主党内から造反者は出るのか出ないのか、出るとすれば人数は何人か。
 こうした動きに対し、メディアを始めとした国民の反応も様々に分かれている。
1.被災地のことを考えると政局をやっている場合じゃない。
2.国難時に政治空白を作るべきではない。
3.菅首相以外の誰がなってもいまより良くなるとは思えないから、菅首相のままでいい。
4.無能宰相は早く替えたほうがいい。
 大きく分けると、このようになりそうだ。
いずれの意見ももっとものようだが、1〜3は現状維持派で、4は交代派といえるだろう。
 さて、現在のような国難に直面している時、国のトップは替えるべきではないか、それとも無能無策なら替えた方がいいのか。

 実は1か月程前、似たような話をし合ったことがある。
東京から来た学生時代の友人と岡山で食事をしている時、「実はいま、ある会社に非常勤監査役として行っているんだが、この会社が危ないんだわ」と言う。

 先代が1代で築いた会社で、現社長は2代目。先代が築いた財産(取引先等)で、いまは仕事が出来ているが、この先いつまでもそれだけでは無理だと分かっているが、なかなか新規顧客の開拓や新しいことをやろうとしない。そのくせ先代のワンマンなところだけは真似て、人の意見は聞かずになんでも自分で決めようとする。それでいい結果が出ればいいんだが、いつも逆だから困っている。俺なんかも時々意見はしているんだが、こちらの言うことは全然聞かない。
 金融機関もいままでは一生懸命支えてきたが、さすがに最近は重荷になっているので、やがて手を引くと思うが、そうなると間違いなく倒産する。一番いいのは、その前にどこかと合併させることなんだが、それもなかなかうまくいかなくて、どうしたらいいかと困っている。

 まるでどこかの政党の現状を聞いているような気がしたが、ふと思い出した。この話は2、3年前に彼から聞いたことがある。ということは数年間、状況は全く変わってないということだ。つまり上記の話は彼のグチで、彼は監査役としてなにも行動せず、事態を傍観していただけということになる。
 JA系の金融機関(彼の出身母体)がメーンバンクのようだが、その気になれば社長交代を仕掛けることも可能なはずだが、こちらも責任をかぶる腹はないようだ。

 私の意見は企業と社員のことを考えるなら、早急にトップを交代すべき、である。
そのことは数年前にこの話を聞いた時にも、そう答えている。
 先が見えているならいまのうちに手を打つべきだ。にもかかわらず、いつまでたっても手を打たないのはなぜか。
 答えははっきりしている。私の友人を含め誰も責任を取りたくないからだ。裏を返せばその会社の自死を待っているのである。

 こうした無責任体質がこの国を覆っている。
「海水の注水を止めろ」と言った言わない。「再臨海の危険性がある」と言った覚えはない。「可能性はゼロではない」と答えた等々。
 内閣の中枢、原発事故対策の中枢にいる人達が言質を取られまいとして、こんなことを言い争っている。誰も責任を取ろうとしないし、取りたくないのだ。それに比べれば、東京電力福島第1原発の現場で指揮を執っている吉田所長は立派だ。本社の意向に逆らっても自らの責任で海水注入を続行している。
 組織論的に見れば、氏の行動は手放しで賛美すべきものではないだろうが、緊急時に現場の指揮官に必要なのは無責任体制ではなく、結果に対して自ら責任を持つ態度と行動なのは間違いない。
それが欠けていたが故に、3.11以後が人災と言われるのである。

 無責任体質は内閣だけではない。内閣不信任案を提出しようとしている野党自民党側も同じだ。
 野党は不信任案を提出して存在意義を示せばそれでいい、だって。これがこの間まで政権を担っていた党の総裁の言葉かと耳を疑ってしまう。
 不信任案を提出する以上は成立を目指すべきで、拙速に出せばいいというものではない。
 結局、この国には政権与党にも野党にも無責任体質が蔓延しているから、仮に不信任案が提出されても民主党内の賛同者は少ないだろう。菅首相の対応の遅さを感じながらも、いざ首を替えるかという段になると、首相がコロコロと変わるのはよくない、政治空白は作るべきではないなどの理由を付け自己保身に走る議員ばかりだ。
 冒頭の企業の例と同じで、身を挺してトップの首に鈴を付ける人間は与野党通じて、いや政財界を通じていないようだ。
                                                  (続く)


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