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国難時にトップ交代は是か非か(2)


一歩後退二歩前進か、このまま後退し続けるか

 国難時にトップを替えるべきではない、という議論は過去なんども繰り返された。一致団結して事に当たらなければならない時に政局ではない、という意見は一見もっともに聞こえる。
 しかし、戦場で司令官が間違った指示を出したり、思い付き的な指示を突然出せば、1線で戦っている兵は戸惑うどころか、部隊が全滅する危険さえある。
 こういう場合は、司令官から指揮権を剥奪し、代わりに副官が指揮をとることが、上官の命令には絶対服従の軍隊でさえ認められている。もちろん、それには厳しい条件が課せられているが。
 こうした例はどちらかといえば陸軍より海軍の方に起こりうるようだ。海戦は陸戦とは異なり、乗員は艦と運命を共にしているからである。船長の判断は艦(全乗員)の命運を左右するため、トップは常に最善の判断をスピーディーにしなければならない。
 この判断を間違えるトップに指揮権をいつまでも委ねていれば、近い将来、艦は沈むことになる。そうなることを防ぐためには、船長から指揮権を剥奪し、指揮官を替えるのが一番だ。
 ここで1歩後退しても2歩前進すれば、それは1歩後退ではなく1歩前進である。
問題は交代に要する時間をいかに少なくするかだ。

 思えば鳩山氏から菅氏に首相が交代し、その後民主党代表選が行われた時、多くの人は次のように言い、菅氏を支持した。
「首相がコロコロ変わると諸外国から笑われる」
 私は「間違いに気付けば正すのは速い方がいい。世界で笑われるぐらいは大したことではない。暗愚な宰相の下で政治が行われる方が問題」と言ってきた。

 権力に執着し、自己保身しか考えない人が組織のトップに君臨していると、部下はやがてやる気を失っていき、組織は早晩ダメになる。
 もう少しやらせてみようとトップ交代を先延ばしにすれば、それだけ打つ手が遅れ、結果的に時間的ロスは長くなる。
 要は目先のロスを考え、後で大きなロスをするのか、いま多少のロスをしても後でそのロスを取り戻すかどうかだ。

 強い組織は指揮官の周囲にイエスマンではなく、いざとなれば異見をも進言する副官がいるかどうかだ。
 現内閣では仙谷由人氏(内閣官房副長官)がそれに該当するかもしれないが、彼は主役より脇役が目立とうとするタイプで、二重権力構造を作ろうとするので、そのあたりが菅首相から警戒されている。いずれにしろ副官というタイプではない。

 面白いのは、菅首相の評価が第二次菅内閣の前後というか、震災前後で、識者を中心に大きく変わってきたことだ。
 第二次菅内閣発足前は「短期間に首相を替えるのはよくない」という世論に助けられたが、今回の対応の遅れは菅首相が問題と指摘していることだ。
 本来ならこの時点で首相交代という流れになるはずだが、その流れが一気に加速しないのは
1.目先の政治空白の心配
2.交代候補不足
からだ。

 1は目先を心配するあまり結果としてさらなる遅れにつながることが分かってない。
2は深刻。
菅氏ではダメという点では一致しても、ではこの非常時に誰がいいのかとなるとハタと困ってしまう。

 なぜ困るのかというと、非常時のトップ交代は派閥次元での交代劇ではないからだ。その次元での交代ならかえってマイナスになる。
 非常時の指揮官交代は全軍の命運を預けるわけで、それを引き受け、実行出来る人物でなければならない。
 最善は後方部隊から選ぶのではなく、すでに第1線で戦っており、リーダーシップを発揮している人物。
 次善が、現在は後方部隊にいても、与野党をまとめ、一致協力体制を築ける人物。そして私心がないことが条件である。
 さて、そうした人物が現れるかどうか・・・。


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