環境異変という外的要因
我々がこの星の歴史を振り返ってみる時、高度に栄えた文明が存在した痕跡をあちこちに認めざるをえない。それは巨石文明という形だったり、帝国という形だったりするが、わずかに残された痕跡から想像できるのは古代は遅れた社会ではなく、我々が想像している以上に発展した社会、ある部分では現代よりはるかに進んだ文明が存在していたのではないかということである。
にもかかわらず、それらの文明はある時を境に忽然とこの世から消えてしまった。なぜ、それらの文明、例えばオルメクやインカ、マヤ、メソポタミア文明、さらに近代に下ればローマやモンゴル文明はなぜ滅びたのか。その後に現れた文明は前の文明と不連続なのはなぜか。
先史時代に栄えた文明が滅びた理由の1つに自然環境の激変がある。地球に降り注いだ隕石や火山の大噴火、大洪水などだが、世界各地の伝説に共通しているのは大洪水で、最も有名なのはノアの洪水だろう。
それを寓話と取るか、歴史の事実と取るかは見解の分かれるところかも知れないが、かなり広範囲な地域で起きた大洪水によりそれ以前の文明が滅んだのは間違いないだろう。
降り注ぐ隕石で恐竜が絶滅し、火山の大噴火でポンペイ等の都市が瞬時に絶滅するなど多くは自然環境の激変で滅亡しているが、文明は外的要因より内的要因によるところが大きい。
文明の帝国化が滅亡を招く
例えばローマやモンゴルなどの帝国は膨張しすぎた結果の崩壊である。もしかするとオルメクもインカやマヤもそうかもしれない。文明と権力は一体であり、権力の拡大、つまり帝国化に付随して文明も拡大していく。つまり文明の帝国化が崩壊を招くのである。
帝国化した権力は外見的には強大化しているように思えるが、物体の膨張に比例して内部の質量は薄まっていくように、膨張つまりベクトルが外へ向かへば向かうほど内に向かうベクトルは弱くなり、両者の均衡が破れた時ビックバンが起き、帝国化した権力も文明も滅びる。
いま我々が直面しているのは成熟しすぎた文明と外へと拡大し続けていたベクトルの内方向への収斂である。ベクトルの内向化はソビエト連邦の崩壊と東側諸国の崩壊、分裂から始まり、EUの崩壊、そしておそらくはスコットランドのイギリスからの独立。すでに世界規模で外と内の均衡が最終段階に入っているように見える。
実のところ文明の成熟は権力の弱体化に大きく貢献している。世界規模で見るなら帝国の最後の砦は中国である。この国はまだ帝国を拡大しているように見える。しかし、中国では文明が急速に成熟しつつある。それは先進諸国のどの国も経験したことがないスピードで成熟している。本来なら権力と文明は一体化して拡大していくが、この国の場合は両者が少し歪な形で膨張し、スピード化している。その分、文明の崩壊は早いだろう。
破れつつあるベクトルの均衡
文明崩壊の後に待っているのは何なのか。何10万年か何1000万年、あるいはもっとはるか後かも分からないが、この星に新たな生物が現れ、あるいは人類のDNAを持った生物が生き残っていたとして、彼らが見つけるのは自分達より以前に地球という星に生物がいたらしい痕跡、それは岸壁に刻まれたリンカーンの顔や仏の姿だったりで、その生物(人類)は0と1しか数えることが出来ず、0と1の組み合わせで意思伝達をしていたのだろうか、と首を傾げるだろう。彼らが高度な文明を持っていたとは俄には信じられないに違いない。
なぜなら書かれたものはすべて朽ち果て、残されたのは刻まれたものだけだからだ。紙に書かれたもの、小さな金属片(IC)に記録されたものは跡形もなくなり、コンクリートも朽ち、崩壊していく。唯一、朽ち果てず残るのは岩に刻まれたものだけだ。それでも、この時代と、その前の時代にバベルの塔、エンパイアステートビルという高い建造物があったということが、伝説の中で語られるかもしれない。何のために彼らはそんな高い塔を建てようとしたのだろうと不思議がられ、神をも恐れない態度が自らの滅亡を招いたと語り継がれるのだろうか。
2019年2月3日、アメリカは中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄すると表明した。同日ロシアも同条約の履行を停止すると表明した。
たしかに現条約に中国は参加していないなどの問題点はある。軍事大国化している中国抜きの条約はあまり意味がない。だからといってINF条約を破棄してしまえば戦争の危険度は高まるばかりだ。INF条約破棄ではなく中国を加える努力をするのが先ではないか。
いま世界が手を焼いているのは中国と北朝鮮というのは共通した認識だろう。中でも問題は中国である。この国がどう変わるのか、この国をどう扱うのかで我々(この星)の未来は大きく変わるだろう。
我々はどこへ向かっているのか、どこへ行くのか−−。
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