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迷走するベスト電器、再生はなるのか(1)


 3月20日、ベスト電器(本社・福岡市)の社長が突然交代した。
この1月、社長に就任したばかりの深沢政和氏が辞任し、新たに小野浩司氏が社長に就任した。そして5月の株主総会後には18人いる取締役の大半が辞任し、取締役は半数以下の7人になるという。一体、ベスト電器で何が起きているのか。ベスト電器の将来はどうなるのか。

富士通の内紛劇と似ている

 新旧社長の年齢を比べると深沢前社長65歳、小野新社長54歳。トップの年齢が9歳も若返り、取締役も半数以下に縮小したわけで、傍目には役員もスリムになり、再建への評価できる人事のように見える。
 事実、「意思決定のスピードが遅かった」ことが今回の社長交代劇の背景にあると小野氏自身語っている。会見通りの前向きな理由ならいいのだが、どうも言葉通りに信じるわけにもいかないようだ。

 今回の突然すぎる辞任劇で、まず頭を過ぎったのが富士通の例である。
昨年9月、野副州旦(のぞえくにあき)社長(当時)から「病気療養のため辞任したいとの申し出」があったので取締役会で了承し、間塚道義会長が社長を兼任することになった。年が明けて1月22日、同社は山本正己常務の社長就任(4月1日)を発表した。これで4月から山本新体制の下、富士通は新たな船出をするかに思えた。ところが3月になり前社長の野副氏が「病気療養」による辞任理由の取り消しを求める文書を同社に送ったため、話がややこしくなった。
 この過程で明らかになったのは野副前社長の辞任は、実は辞任ではなく「解任」に近い形だったようだということだ。
そういえばおかしなことはあった。
「病気療養のため辞任したいとの申し出があった」と発表したのは会長の間塚氏で、事前にそれらしい兆候もなかったのに取締役会の日に突然「辞任申し出」がなされたことだ。
 ここでは富士通の内紛劇に触れるのが本題ではないので詳細は省くが、富士通の内紛劇はいまに始まったことではなく過去にも前例があるので「やはり、そうか」と感じた人も多いのではないかと思う。だが、問題は「解任」理由(と思われる)である。
 どうもいろんな情報を総合すると野副氏の改革が急だったことに反発したことにも一因がありそうだ。

社長辞任、真の狙いは?

 さてベスト電器である。
社長就任2か月での交代という場合、考えられる理由は2つしかない。
1つは差し迫った「健康問題」だ。ところが、深沢氏に健康問題はなさそうだ。
2つめは内紛による「解任」である。しかし、深沢氏が自ら辞任を申し出ているから「解任」の可能性は低い。
 では、何なのか。
 奇妙なのは深沢氏の社長辞任だけでなく、代表取締役専務の井沢信親氏も同時に辞任することだ。しかも、その辞任は井沢氏自身の意思に反して行われたようだ。つまり、辞任を迫られたが、それを拒否したところ専務を解任されたと彼は述べている。
 井沢氏が代表権を得たのは2月。それからわずか1か月での退任である。井沢氏にしてみれば「納得できない」となるのは当然かもしれない。

 こう見てくると、どうやら今回のトップ交代劇は井沢氏の解任が目的だったように見える。
 では、井沢氏に「解任」されなければならないほどの「不祥事」があったのかとなると、どうもはっきりしない。
 企業が没落する前夜には必ず経営陣の内紛が起こり、それが企業の体力を弱め、さらに没落スピードを速めるというのはよく見かける光景だ。ベスト電器の場合もこのパターンに当てはまるのか否か。
 もちろん崖っぷちで踏み止まり、企業再生を果たす例がないわけではない。ただし、その場合は対立内容や対立軸のどちら側に正義があるか、あるいはどちら側の方法が再生に有効かによって分かれる。
 問題は3番目で、ともに再生に有効と思い手を打つわけだから、にわかには判断しにくい。
                                                 (続く)


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