二極化するベーカリーショップ(3)
〜数へのこだわりを捨てる


数へのこだわりを捨てる

 ベーカリーショップへの参入障壁は比較的低いようで、パンを作って売っている所は随分ある。車でパンだけを売りに来る移動販売もよく見かけるし、住宅地では週の内1、2日だけ自宅でパンを焼いて売っている、趣味の延長線上のような所もある。
 こうして見ると一般的なベーカリーショップにとって競争相手は多く、他店と同じことをしていては生き残れないだろう。

 では、どうすればいいのか。方法はいくつかあるが、ひと言で言えば数へのこだわりを捨てることだろう。近代生産システムは数へこだわることで発展し、利益を生んできたが、そこから脱却し、数へのこだわりを捨てることに生き残りの道があると考える。
 数−−販売個数、売上高といった数量にこだわるから効率を追求せざるを得ない。パン生地を自分の所で作るより、大手製造メーカーが工場で大量に製造した冷凍生地を仕入れ、それに一部手を加えて作った方がはるかに時間効率がいい。Time is Money 時間=コストと考えるからコストの削減=時間の短縮と考える。
 だが、削減したのは本当にコストで、パンの味や消費者の安全・安心ではなかったのか。一見、非効率、非生産に見えるが、時間や手間暇をかけて、おいしさを追求することで、同質化競争、販売競争から脱却でき、利益や時間のゆとりができるのではないかと考える。

 日にち限定でオープンしている小さな手作りパン屋や、無添加にこだわり手作りパンを作り続けている小さなショップなどがその好例だろう。彼らは売上高や販売個数より、健康、安心、味といったことの方に価値観を見出しており、こうした動きは全国的に少しずつ増えている。その1つは「栗野的視点(No.577):過剰生産こそが問題」の中で「捨てないパン屋」として紹介したので、そちらもご一読を。
 それにしても街を歩いているといろんなものを発見するから面白い。
                                               2017.9.11

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