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 旨い酒造りにこだわる6代目の挑戦(2)

池亀酒造株式会社 代表取締役 蒲池輝行
福岡県久留米市三潴町草場545 
tel/0942-64-3101

こだわりの焼酎づくり

 「それにしても人が多すぎるな」
社長に就任し、経営者の目で社内を見回した時、売上高と人員がアンバランスなことに気付いた。
大手企業ならリストラをするところだ。いや大手に限らず、再建第一に考えるなら、まずリストラに着手すべきだろう。
だが、輝行はそうしなかった。
「地場中小の蔵は社員といっても皆地元の人で、それこそ父や祖父の代から働いてくれている人達ばかりですから、大手企業のように非情にはなれませんよ」
 かといって余剰人員を抱えたままでは経営がおかしくなる。
そこで輝行が打った手は新商品の開発だった。新商品を開発し、商品アイテムを増やすことで、皆の仕事を増やそうと考えたのだ。

 最初の1年間は機械の購入や、試作の繰り返しなどの、いわば「仕込み」に追われた。
 よそと違うもの、よそに負けないものを造りたい。おいしくて、個性のあるものを・・・。培養中の麹の様子を確認している蒲池輝行社長
そう考え、材料、段取り、仕込み、方法などを一つ一つ見直していった。
麹は最近多く使われている白麹ではなく、昔ながらの黒麹を使うことにした。
麹の培養も自分で行い、蒸留も昔ながらの常圧蒸留にするなど徹底的にこだわった。

 現在の主流は減圧蒸留である。
装置全体を減圧(真空)して加熱するので、常圧に比べてはるかに低い温度、40度〜50度で醪(もろみ)を沸騰させることができ、雑味の少ないソフトな焼酎ができる。
 かつては男性の、それも南九州を中心としたローカルな飲み物だった焼酎を全国区の飲み物にし、女性層にもファンを広げた一因は減圧蒸留によりソフトな焼酎が増えたことにもある。

 それをあえて常圧蒸留にチャレンジしたのは他社との差別化を図りたいということもあっただろうが、ある種の意地、反発と言い換えてもいいかもしれないが、そんな気持ちもあったのではないだろうか。
造り酒屋の家に生まれた意地、研究者として歩んできた意地、先代や取り巻く環境、さらにいえば癖のない味ばかりを持てはやす消費者に対する意地みたいなものが・・・。
 常圧蒸留は原料の雑味が出、それらが芳醇な味わいを醸し出すのが特徴で、昔からの焼酎党はそれを好んでいた。また最近では、ソフトな焼酎に飽き足らず常圧蒸留による芳醇な香りの焼酎を好む人も増えている。

 「ちくご胡座(あぐら)」はこうした「通」を意識して造った長期貯蔵焼酎である。
常圧蒸留で造った焼酎は長期貯蔵している間に味がドラスチックに変わることがある。2年、3年先の味を予測しながら「寝かせる」が、予測通りの味になるとは限らないのだ。それが難しくもあり、面白いところでもある。
こうして造ったタンクの中から最も出来のよかったものが「胡座」だ。
違いが分かる男同士が胡座をかき、じっくりと味わって欲しい−−。
「ちくご胡座」というネーミングにはそんな想いが込められていた。
                                           (焼酎編 完)


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