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 生き抜くためにも企業の営業力を上げよう。(2)


1線級の営業に求められる能力とは

 「1線級の人間を営業に回せ」
私は以前から口を酸っぱくして言っています。

2線級や3線級の人間を営業に回していてはダメです。
「人当たりがいいから営業向きだろう」とか「文系だから営業」「他の部署で使えないから営業に回すか」などというのは論外です。

 営業はフロンティアであり、水先案内人です。
いまの世の中の動きがどうなのか、自分達に関わりのある業種の動向、技術の動きはどうなのか。
そういう情報を社内に持ち帰り、開発や企画部門、さらには企業のトップ(上層部)に伝えなければなりません。
 そうした情報に基づいて船長(社長)が進路を指示するわけです。
そんな大事な仕事を任せるのですから、ある部分では社長と同じような経営感覚を持った人間でなければなりません。
これで「1線級の人間」という意味がお分かり頂けたと思います。

 さて、今回のM氏の営業アプローチは次の順で進んでいます。
1.あるきっかけから技術部隊にアプローチできた
2.自社工場を見に来てもらうことに成功した
3.自社の機械を使えばお客様の仕事がどのように効率化できるか、市場競争力が高まるかを説明した。

 ここで重要なのは相手のメリットを説明したことでしょう。
販売などでは「顧客志向」と言われますが、お客様の立場になって提案をするということです。
 言葉で言ってしまえば簡単なことなのですが、実際に行うのは案外難しいようです。
人間はどうしても自分の立場でものを言うからです。

 例えば数年前、健康食品を製造販売している会社を指導しましたが、「顧客志向」ということが最後まで理解できませんでした。
お客様の健康を気遣うよりは、売りたいという気持ちがどうしても先に出るのです。
もちろん、そういう態度だから売り上げが落ち込んできたのですが。

 技術系の企業ではこんな例もありました。
数年前のこと、顧問先の会社がいままで使っていた商品パンフレットや展示会用パネルがよくないので作り替えたい、アドバイスをという話だったので、一緒に検討することにしました。
 その会社のパンフレットには製品の性能のことが詳しく書き込まれていました。
しかし、その機械を入れると何がどう変わるのかを今一つ思い描くことが出来ませんでした。
これでは製品紹介パンフレットの役目を果たさないだろうと思いました。
「仕様のことばかりあまり書いても」と言うと、「いや、技術者は細かい仕様を知りたがるんです」という言葉が返ってきました。
 確かにそうかもしれませんが、細かい仕様を知りたがるのは最終段階です。
その機械を採用するかどうかを最終的に決める段階になると細かい仕様がものを言ってくるでしょう。
しかし、その前の段階、導入するかどうか迷っている段階では、この機械を入れることで業務がどのように変わるのかの方がものを言います。特に直接担当者以外の人間が判断する時は。

 それにしても、なぜメーカー系のパンフレットには仕様書のようなものが多いのでしょうか。
それは自分達が主張したいことだけを載せようとしているからでしょう。
こういうと、言いたいことを載せるのは当たり前ではないかと言われそうですが、
往々にして<言いたいことと、聞きたいことは違う>のです。

 相手はこの機械を導入することで我が社にどのようなメリットがあるのかを聞きたいと思っているのに、機械のよさを説明して売りたがる。
ここにミスマッチが起きます。

 パンフレットの類でさえこれですから、人と人が接する営業の場合はもっとミスマッチが起きます。

 営業は相手の課題を見つけ、それを解決する提案が求められます。
こうした能力(営業力)が近年、非常に落ちています。

 なかには相手に言われたことだけをよく聞く営業がいますが、これは「ご用聞き営業」で、<問題解決型の提案>をしているのとは全く別ですから、両者を混同しないように。

 さて、問題は技術系企業の場合です。
既述したように、近年、技術や情報のブラックボックス化を図る企業が増えつつあります。
まるでハードル競争のように一つ一つハードル、ゲートを乗り越え、目指す箇所に辿り着くのも一苦労ですが、せっかく辿り着いてもそこはブラックボックスだったり、貝のように口をつぐんだ相手だったりして、情報を引き出すのも大変です。
いわんや技術のことが分からない人間が製品の売り込みにだけ来てもほとんど相手にされません。
 大体、技術者には偏屈な人間が多いというか、相手の力量を推し量って喋るタイプが多いように思います。
「鐘も撞木(しゅもく)の当たりがら」という諺にあるように、打った箇所が悪ければほとんど音は出ないし、小さく叩けば小さい音が出、大きく叩けば大きな音で鐘が鳴ります。
こちらが知っている程度に応じて情報を出してくるのです。

 もし、先方企業から情報を得られないと嘆いている人がいるなら、それは2線級の人間を営業に配置した社長の責任です。
繰り返し言いますが、これからの営業は1線級、それも1線級の技術者を営業現場に配置すべきだと思いますよ。


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