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岡山の製造業を活性化したい!
         〜〜「リエゾン岡山」を期待して〜〜


 私が「リエゾン九州」のような組織−−製造業の製品とマーケットの間の懸け橋をする−−の必要性を強く意識しだしたのは、いまから10年近く前になる。
 長年、製造業の取材を続けていて、製造業はモノは作るが、マーケットやユーザーのことを考えて作っていないのではないか、もっといえば、自分勝手に作りたいモノを作っているように見えた。
 そして作った後でモノが「売れない」、「どこに売ったらいいのか分からない」とこぼしている。これでは魚がいないところに釣り糸を垂らして、釣れないとぼやいているのと同じである。
 魚がいないところで釣るのはよほどの名人でも難しい。基本は魚がいるポイントで釣ることだが、こんな自明のことが案外理解されていない。

 つまり、製品を開発する場合、販路(どこに、どういう方法で、いくらで売るのか)を事前にどこまで考えておくかということが非常に重要なのだが、中小企業の場合、商品化段階で販路まで考えているところはごく希である。
 一方、大手企業はといえば、商品化にあたってまず市場調査を行い、ついで価格戦略・販売戦略、デザイン戦略等を決め、さらに商品化された後、消費者を集めて意見を聞いたり、使い勝手を試したりした後に商品を市場に投入しているのである。
これでは中小企業がかなうはずがない。

 たしかに中小企業には大手と同じようなことをしたくてもヒト、モノ、カネ、時間がなくてできないという事情もある。
しかし、それ以上に問題なのは「いいモノを作れば売れる」という一時代前の信仰めいた考え方に支配され(逃げ込み)、販路のことを考えようとしない姿勢ではないかと思う。
 「いいモノだから売れているのではない。売れているものがいいモノなのだ」と誰かが言っていたが、「いいモノが売れるとは限らない」のは古今東西の事実である。かといって、いい加減な商品でも売れさえすればいいモノなのかといえば、それもノーだ。
 大事なのは「いいモノを、いかに売るか」ということである。
その点、技術に自信を持っている中小企業は多く、彼らは「いいモノ」を作ろうと日々努力している。
問題はユーザーの視点や市場性の捕らえ方が不足していることだ。
そこで、そうした不足部分を外部で補いたいと設立したのがリエゾン九州なのだ。

 設立から約8年。現在は商品を開発した企業に発表してもらい、それを参加者全員で議論する形態を取っている。
当初は各分野の専門家を集めて、販路を探す方法を取っていたが、これでは当事者の企業に他人任せの依存、甘えが生まれることが分かったからだ。
 もう一つは岡目八目である。自社の欠点・弱点はなかなか見えなくても他社のことはよく分かるもので、他社商品について色々検証、議論することが自社の勉強になるのだ。むしろ議論する過程こそが非常に重要であり、そうした過程を通して参加者が発想の転換、視点の転換を身に付けていくわけである。
 そこで最近は参加者全員で意見を出し合う形を取っている。3人寄れば文殊の知恵というか、衆知を集めるということと同時に、参加することで知恵を出しているようにみえながら、実は参加者自身が知恵をもらっているという相互作用である。
この関係こそが実は非常に需要だと私は考えている。

 いままでモノづくりの現場に欠けていたことはユーザーサイドの視点である。
例えば消費者にどのような使われ方をしているかも知らずにモノを作っていたり、ユーザーが求める市場価格も知らずに製造していたのでは売れないのは当たり前である。
ユーザーサイドに立ったモノづくりの見方が必要で、そのためには販路も含め他人任せではなく、自ら取り組むことが必要だろう。
 そういう研鑽の場としても「リエゾン」が役立つのではないかと思っているので、関心がある方はリエゾン九州の月1回の例会にぜひ参加して欲しいし、「自社商品に対して一般消費者の意見を聞いてみたい」、あるいは「販路に対してアドバイスが欲しい」とお考えの方はどんどん参加していただきたい。

 最近、縁あって岡山県の製造業の皆さんと知り合う機会ができ色々話をしていると、岡山にも「リエゾン岡山」のような組織が必要ではないかと痛感した。
私自身が岡山県出身ということもあるので何らかの形で地元のお役に立ちたいとは考えていたが、「リエゾン岡山」のような組織を作るのも一案かなと思っている。
 もともとリエゾン九州を作ったとき、「リエゾン○○」というような組織が各地に必要ではないか、あるいはできればいいなと考えていたので、当初から組織名をリエゾン「九州」と付けたといういきさつもある。
 まあ「リエゾン岡山」ができるかどうかということではなく、不肖私でもお役に立てるなら岡山の製造業を活性化するために今後動いてみたいと考えている。


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