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バルコムモータースの参入で福岡が激戦市場に(3)
〜ヤナセとバルコムは並び立てるか〜


ヤナセとバルコムは並び立てるか

 今回の件に対する見方はいくつかあり、それぞれの立場で見方は変わる。
1つはディーラーサイドに立った見方で、もう1つはメーカーやフランチャイザーサイドに立った見方。そして3つ目がユーザーサイドの見方だ。
 まず、ディーラーサイドからは当然のようにBMW Japanの横暴をなじる声があちこちから聞こえてくる。普段、締め付けが厳しければ厳しいほど、多くの声が陰で上がる。BMWや他メーカーの日本法人に限ったことではなく、日本車メーカー系でも同じことだが、特に外資系は(多分野でも)ドライな対応をすることがままあり、そうしたことがディーラーの不評を買うことが多い。

 「備品類に至るまでBMW仕様以外は許されんわけですから、そりゃあコスト高になりますよ。しかも売り上げノルマは厳しいでしょ。それが嫌なら辞めてもらって結構と言われるんですから」
 かつてBMWディーラーに在籍していた関係者はこう憤る。
 そのほかにも「富士モータースが赤字になったのは東支店を無理してオープンしたから」「売り上げノルマを達成するため自社登録車を増やしたのも一因」などという声が内部からも聞こえてくる。たしかにそうしたこともあるだろうが、半分は遠吠えにしか聞こえない。元はといえば営業力の弱さが原因なのだから。
 とはいえBMW Japanの力が強く、言うことを聞かないところには同じエリアに別のディーラーを進出させたり、自らが直営店を出すという、およそ日本企業では考えられないようなことを平然と行うやり方には非難の声が多い。
 BMW Japanにとっては数字が全てで、顧客やマーケットを育てていこうという考えはないようだ。

 一方、ユーザーサイドからは今回の動きを歓迎する声も上がっている。
いままではヤナセでしかサービスを受けられなかったのが選択肢が増え、今後はバルコムでもサービスを受けられるからだ。同じ内容なら対応がいいディーラーでサービスを受けたいと思うのは誰しも同じだろう。
 バルコムモータースは全国のBMWディーラー中で顧客満足度ナンバーワンにランクされている(BMW JapanのHPから)のだから。ただ、この「顧客満足度ナンバワン」という言葉は文字通りに100%信じられるものではないが。

 「顧客満足度ナンバワン」にランクされているバルコムも、こと競争となれば話は別だ。
 中国地方ではネームバリューがあっても全国的にはヤナセのネームバリューの方が高い。ましてや福岡ではほとんど知られていない。そんな市場で勝負するのである。仮にBMW Japanから言われて進出するにしても、ある程度の勝算がなければ進出はできない。進出にあたって最も必要としているのは地域に密着した人材だろう。
「うちの社員がかなり引き抜かれているようです」
 ヤナセの社員は苦々しくそう言い放った。
 バルコムが引き抜いているのか、ヤナセの社員の方からバルコムに働きかけたのか。恐らくその両方だろうが、BMW Japanが水面下で引き抜きの根回しをしているという噂は業界内で密かに囁かれている。
 ただ、組織に不満を持つ人材はどの組織でも常に存在するもので、彼らがこの機会に移籍を考えたとしてもおかしくはない。

 ヤナセにとっての問題は流出する人数と質だろう。
力のある営業員が流出すれば組織にとってかなりのダメージになるが、不平不満分子の流出ならかえって組織は固まる。一般論で言えば、どの程度の「エサ」が用意されているかによって、流出する人材の質が決まる。

 もし今回の進出劇が、密かに囁かれているようにBMW Japan主導のもとで行われたものであればディーラー2社を巻き込んだ三つ巴、いや2.5巴か、いずれにしろBMW Japanとヤナセ、ヤナセとバルコムの仁義なき戦い第2幕はかなり激しくなると予想される。


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