グローバル化が招いた食の危険
〜上海福喜食品の期限切れ食肉問題(2)



マックとファミマの2社だけか

 上海福喜食品からチキン・ナゲットを調達していた日本企業は日本マクドナルドとファミリーマートの2社と報じられている。
 では、他は大丈夫なのかというと、どうもそうとは言い難いところが怖い。たしかに、同社から「直接」、「チキン・ナゲット」を仕入れていたところは上記2社だが、第3社経由の迂回仕入れや、チキン・ナゲットに加工する前の鶏肉仕入れは数に入っていないからだ。

 しかも、上記からも分かるように中国食品の汚染は今回の鶏肉問題に限らず、広い分野に及んでいる。では、中国からの食材輸入をストップすれば安全か。恐らくそれは不可能だろう。すでに世界の食は中国抜きには成り立たないほど中国食材に依存している。
 例えば冷凍餃子。例の毒入り餃子事件以来、「国内製造」と表示されているものが大半になったし、その表示のものを選んで買っている人も多いだろう。だからといって、国内製造が安全とは限らない。
 というのは、国内工場で製造された餃子(他の食品でも同じだが)も、その中身の原材料、例えば肉や野菜類は中国製のものが大半だからだ。しかし、原材料の表示はあっても、それら原材料の生産国名は表示されない。
 こういうことを考えると、上海福喜食品の期限切れ食肉に限っても日本マクドナルドとファミリーマートだけと考えるのは楽観的すぎるだろう。

 個人的に問題だと考えるのが大手流通業のPB(プライベートブランド)商品。それらには販売者の表示だけで、製造者は表示されていないのだ。そのことに対し、当の流通業各社は「自社が全責任をもって販売しているので問題はない」と言っているが、それはなにか問題が生じた時の責任を取るということであり、消費者が商品を選択する際の情報としては少ない。
 穿った見方をすれば、あえて消費者に少ない情報しか与えていないとも言える。

安全安心な食はどこにもない

 今回の件で「やはり中国企業は」と思った人は多いだろうが、本当の怖さはもっと別の所にある。
 上海福喜食品はアメリカの食品卸売会社OSIグループ(世界各地に工場を持つ世界最大の食品卸売会社)の企業、つまりOSIの中国法人企業である。平たく言えば米系企業の中国工場が起こした食肉汚染問題。
 では、今回の件に関してOSIグループのトップ、シェルドン・ラビンCEOはどう釈明しているのか。
「上海福喜で起きたことは全く受け入れられない」「私が率いる企業の価値を反映していない」と記者会見で語り、上海福喜食品の操業を停止し、再発防止に向け、中国の全工場の状況を見直す方針を明らかにした。
 要は中国の現地法人が勝手にやった、常軌を逸した行動であり、OSIグループの企業方針や企業風土とは全く相容れないものだというわけだ。
 それはそうだろう。同グループの工場はHACCP(ハセップまたはハサップ)の認証を取得しているのだから。

 HACCPとは「Hazard Analysis Critical Control Point」の頭文字を取ったもので危害分析重要管理点と訳されている。
「食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生する恐れのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析( Hazard Analysis )し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理点( Critical Control Point )を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法」(厚生労働省のHPから)のことだ。
 抜き取り検査による従来の衛生管理とどこが違うかといえば、抜き取り検査の場合は完成品を抜き取ったサンプルにたまたま問題がなかったということがあるのに対し、HACCPは全工程を対象に危険な箇所を特定して徹底管理するため、「より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となるとともに、原因の追及を容易にすることが可能」(同)になるはずである。
 にもかかわらず、なぜ上海福喜食品で期限切れ食肉を混入するようなことが行われていた(行われた、ではない)のか。

 ここでちょっと思い出して欲しい。直近では、ベトナムから輸入した冷凍シシャモに殺鼠(さっそ)剤や人糞とみられる異物が混入されていた事件や、2000年6月に起きた雪印乳業(当時)の食中毒事件を。
 前者は毒入り餃子事件と同じく、個人が意図的に混入したもの。後者は停電により製造ラインが止まり、乳材料に毒素が発生したにもかかわらず、それを出荷したために引き起こされた食中毒事件だ。いずれもHACCPの認証工場で起きた事件である。
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