「SMAP」解散騒動から学ぶもの(2)


嫉妬で辞職に追い込まれる

 すでに1年前からM副社長とIマネージャーの確執があり、しかも「SMAP」はジャーニーズの他のメンバーとは違って「踊れない」。そんなグループをあなたは任されているわけで調子に乗るな。「SMAP」を連れて出ていけ、に近いようなことまで言われている。
 ここまで言われれば大概の人が辞めていくだろう。辞職に追い込まれたという表現の方が正確だろう。しかし、Iマネージャーは実際に辞めるまでに1年かかっている。その間に内部で話し合いを続けたのか、それとも独立後の道筋を付けるのに、1年の時間を要したのかも分からない。

 人が組織を離れる理由はいくつかある。
1.目指す方向が組織(トップ)と自分とで乖離してきた。
2.給与等の金銭的待遇が悪い
3.勤務時間や福利厚生等、金銭面以外の待遇が悪い
4.存在価値を否定されたり、プライドが傷付けられ、組織内に居場所がなくなった。

 入社歴や役職により辞職する理由は違ってくるが、役職が上になるほど1と4の理由が占めてくるだろう。Iマネージャーの場合は4番目の「プライドを傷付けられ、居場所がなくなった」からではないだろうか。
 それはそうだろう。そこまで言われれば辞めていくだろう。M副社長はさすがに言い過ぎだ、と思う人は多いだろう。しかし、ここまではっきりした形でなくても、これに近いことはよく行われているはずだ。

 そういえばつい最近、社会保険労務士のブログが話題になった。ブログの内容は「すご腕社労士の首切りブログ」というタイトルからも分かるように、社員を辞めさせる「ノウハウ」を伝授しているもの。中でも問題になったのは「社員をうつ病に罹患させる方法」と題して書かれた文章だ。
 掻い摘んで紹介すると「適切合法なパワハラ」を行い、社員をうつ病にする。その結果「万が一本人が自殺したとしても、うつの原因と死亡の結果の相当因果関係を否定する証拠を作っておくこと」。そうすれば「うつ病自殺されても裁判で負けることはありません」と、うつ病にして辞めさせることを推奨している。
 社労士の大半がこういう人間ではないと思いたいが、この社労士が自ら言うように「すご腕」かどうかは別にして、社員の「首切り」を行いたいという需要はあり、それに過激に答えたのかもしれない。ブラック企業にモンスター社員という言葉が横行する昨今。昔では考えられない程、人の心が荒んでいるようだ。

 ともあれ、能力ある社員程、辞職に追い込まれるようだ。背景にあるのはトップや周囲の嫉妬。昔から男の嫉妬ほど怖いものはないと言うが、火のないところに煙をたてられ、やがて煙が炎になって燃え広がり、いつの間にか張本人と目されるようになり、不本意ながら辞職に追い込まれた人は案外いるものだ。
 トップの度量の狭さがそうさせるのだが、今回のIマネージャーの例もその典型のように見える。

 企業にとって人は財産、宝である。故に近年は人材ではなく「人財」と表記する企業が増えている。だが、本当にそう考えているのか。単に字面だけではないのか。そう思うことが多々ある。本当に「人財」と考えているのなら、彼らのプライドやメンツを潰し、組織に居づらくさせることはないと思うが、どうだろう。
 ○○が次期後継者と社内外で公言(そこまで大ぴらでなくても)しながら、ある時よそからどこの馬の骨ともわからないような人物を自分の友達、あるいは息子の友達というような理由だけで引っ張って来て上に据えれば、「やってられない」と能力ある社員が辞めていくのはある意味当然だろう。
 ここまではっきり分かる形でなくても、それに近いことを行ってないだろうか。特に中小企業は人材が限られているし、組織戦より個人戦に依拠している部分がある。
 しかも、「人財」の退社は単に数が1人減るということにとどまらない。その人が持っているノウハウと会社のノウハウ、さらに顧客の一定数も一緒に流出するということである。下手をすれば顧客情報も全て持ち出されてしまう。
 どこぞの国の企業が日本の技術者を次々と引き抜いてのし上がっていったが、彼らの狙いは技術者より技術情報の方にあったことはいまでは周知の事実になっている。結局、引き抜かれた彼らも「人財」ではなく、単なる材料にしか過ぎなかったということだ。
                                               (3)に続く

ソースネクスト 救出データリカバリーPro


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