富士通 FMV LIFEBOOK CH

 


早期発見はメリットばかりではない。(2)


PSAの数値はほぼ横這い

 3年半前に前立腺がんと診断されたことは以前にも書いたが、その時、医師からは手術か放射線治療を選ぶよう勧められた。だが、私が選んだのは何もしない経過観察だったことも書いた。
 以来、3か月に一度、病院で検査を受けてきた。検査と言っても血液と尿検査で、主目的は前立腺がんの腫瘍マーカー、PSAの数値変動の測定。この数値が4以下は正常数値。
 2017年春の定期検査でPSAが5.5になり、その時、大きな病院で再検査を勧められ5.0、5.3、7.7と推移し、「数値が確実に上がってきているから、念のため生検を」と言われ、どうせ何も出はしないのに、と軽い気持ちで入院検査したところ前立腺にがんが見つかったと言われた。
 当然、医師は手術か放射線治療を勧めてきたが、この程度の数値では何もしない、と「積極的治療」を拒否。
 ただし3か月に一度、定期検査をと言われ、それは了承して現在に至っているが、2019年2月に8.3に上昇したものの年内の数値は多少の上がり下がりはあっても、ほぼ横ばいで推移している。

 3年余りに渡り、検査の度に積極的治療か経過観察かで医師とせめぎ合いを繰り広げてきたが、この頃は医師も私の選択をほぼ同意し、手術云々を勧めなくなった。
 「先生、75歳過ぎれば前立腺がんの治療をしてもしなくても残りの生存年数は変わらないと言われていますよね。もう少しでその歳になりますから、このまま経過観察で行きます」
 「そうですね。健康に気を使った食生活を送られているようですしね。血液検査の数値は何も問題ないです」
 と言われたが、「いや、いや、先生、食生活はもちろんですが免疫力を高めるサプリメントや前立腺にいいという小松菜の粉末ジュースやら結構色々飲んでいます」と言いそうになったが、やめた。

早期治療で後悔することも

 PSAが10いくつで医師が勧めるままに粒子線治療を受けた友人がいるが、治療から5、6年後に排尿困難になり苦しんでいる。救急車で数回運び込まれたほどで、導尿をして尿を体外に出さないとお腹は張って苦しいし、尿毒素が身体に回れば命にも関わる。
 原因は粒子線治療の時、尿管が傷つけられたのではないかというのが医師の診立てだがはっきりしたことは分からない。今でも排尿で苦しんでおり、それがために旅行にも行けず、それまで「200歳まで生きましょう」と言っていたのが、今ではすっかり弱って「もう77歳ですから」と言い出し、クオリティライフとは程遠い日常生活になっている。

 がん細胞を切除してもクオリティライフが送れないのでは、なんのための治療か分からない。私はできることなら旅行にも行きたいし、あちこち撮影に出かけたいと思っている。だが手術した結果、尿もれをしだしたりすると、やはり外出が億劫になる。コロナ禍の今は外出自粛を迫られ、それでなくてもストレスが溜まっている高齢者も多いだろう。まるで二重苦のような生活を強いられているわけで高齢者うつが増えるのも納得。
 そうならないためには医師任せではなく、患者も情報武装をしておく必要がある。そしてセカンドオピニオンで別の医師にも診てもらうなり、意見を聞くなりし、医師の言いなりにならないことだろう。自分の生活なのだから。
 そして早期発見=早期治療ではないことも頭に入れておく必要がある。


(著作権法に基づき、一切の無断引用・転載を禁止します)

トップページに戻る 栗野的視点INDEXに戻る

デル株式会社



グンゼストア