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おせっかい焼きの勝手連的コンサル(3)
〜他社の営業社員を勝手連的教育


他社の営業社員を勝手連的教育

 某生命保険から電話がかかってきた。
「あの〜、今度栗野さんの担当になったAと申します。ご挨拶に伺いたいのですが・・・」
 あ〜、まただ。生命保険会社は新人に古い顧客名簿を割り振るから、新人が入る度に連絡をしてくる。ところが1年たつかたたないうちに営業成績が上がらず辞めていく。するとまた、次の新人が挨拶の連絡をしてくる。しかも彼女達は顧客情報すらまともに調べもせず、本当に挨拶をするためだけにやってくる。
 こんなやり方をやっていては新人は育ちはしない。生命保険会社も社員を使い捨てにする時代は終わっている。もう少し社員を大事にしたらどうだ。
 そんなことを憤りながら相手の話を聞いていた。
「担当になりました」と言っても、支社は違うが別の人間が私の所にはずっと来ているし、なにかあればそちらに連絡している。社内の横の連絡もできてないのか。

 電話の相手はいかにも新人という風で、最初からオドオドしていた。そのことがよけいにこちらを苛立たせる。
「あの〜、担当の方がおありでしたら、そちらの方にされますか」
 成績が上がらない営業というのは自分の方から話を打ち切りたがるもので、相手が電話を切ろう切ろうとしているのがビンビン伝わってくる。
 断られたいのだ。
営業が「断られたい」というのは変に聞こえるが、ダメなセールスは目先の苦痛から逃れることしか考えてない。
逃れるだけなら電話もしなければいいのだが、さすがになにもしないわけにはいかない。
後で上司から報告を求められる。
その時に「電話はしましたが・・・」ぐらいの言い訳は最低限しなければならない。早い話が上司に報告する口実さえできればいいわけで、その先のことなど考えてない。ただひたすら目の前の苦痛から逃れたいだけなのだ。

「君は新人だろう。1年ほど前から似顔絵入りの紙を郵便受けに入れているが、ただ郵便受けに入れるだけでは意味ないだろう。電話をしてきたのも今日が初めてだし。担当がいると相手が言っても、『すでに担当の方はいらっしゃるようですが、私がこの地域を担当していますので、何かとお役に立てるのではないかと思います。一度ご挨拶だけでもさせていただきたいのですが』と言わなくてどうする。会ってもらいたいから電話してきたのだろう。それを自分の方から切ろうとしてどうする。そんな教育もされてないのか」
 よせばいいのについ説教してしまった。
「済みません。それではご都合のいい日にお伺いさせていただきたいのですが、いつ頃がいいでしょうか」
「それがダメだ。相手の都合を聞いてどうする。私なら、これから伺ってもいいかと聞く。それで相手が今日は都合が悪いと言ってから、では、いつならご都合が宜しいでしょうか、と聞かなければ。相手が電話に出たということは、今日はいるということなのだから。次に電話した時はいないかも分からんだろ」
 なぜ、見ず知らずの相手に電話アポの取り方まで教育しなければならないのだ、と思いながら、つい声がでかくなった。
「済みません。それではこれからお伺いしてもいいでしょうか」
「今日はダメ」
「では、いつ頃ならご都合がいいでしょうか。私の勝手を言わせていただければ、来週の火曜日か水曜日にこの辺りを回ることになっているのですが・・・」
「来週の予定は分からないから、また電話していらっしゃい」
 これで電話を切った。できない営業ならまず来週、電話をしてくることはない。恐らく今日の相手もしばらく電話をしてくることはないだろう。

 それにしても最近、企業は営業教育をしてないような気がする。
その一方で、若者はコミュニケーションの取り方がどんどん下手になっている。
だから現場でクレームや食い違いが増えたり、営業成績が上がらず短期で辞めていく社員が増える。
 辞めれば企業は新しい人を採用しなければならない。採用経費+育成経費を考えれば、いまいる社員を育てた方が経費ははるかに安上がりになることは分かっているはず。だとすれば、もう少し営業教育をすればいいのにと思うが、それをやらない。
 社員教育といえばマナーや接遇教育か、体育会的な根性養成教育(それらが悪いとは言わないが)ばかりだ。それも外部任せ。
 でなければOJT(on the job training)という名の同行営業。OJTはその前後に教育と反省をして初めて実を結ぶのだが、ただ現場で先輩社員のやり方を見せるだけではほとんど役に立たない。せめてロールプレイングぐらいはしっかり行ってから現場に出せ、と言いたい。入社させた以上、その程度のことは最低限行うのが企業の責任だと思うが。

 さて、前述の保険会社の女性。あれだけ厳しく言ったにもかかわらず、月曜日にきっちり電話をかけてきた。そこでとりあえず話だけは聞いてあげることにし、近くの喫茶店を指名。
 オドオド感は多少なくなっていたが、やはり社内教育不足は否めない。
「まず質問の仕方を変えなさい。セールストークにはイエス話法というのがあり、相手がイエスという質問をしないと」
「若い人には将来に備えて貯蓄感覚を、ある年齢からは医療保障を説明すれば大体話を聞いてくれる」
「商品説明をするんではないよ、先進医療保険がありますというような。そうではなく、年配者に対しては『いま一番何がご心配ですか? 皆さん、病気とおっしゃる方が多いですね。現在、健康に見えても、もしガンになったら医療費もかかるし、とおっしゃられます。ところで日本人に多いガンはなんだと思われますか。ご存知だと思いますが、胃がんなんですよ』というように話せば、相手が話を聞いてくるだろう」

 まるでOJTだ。会社がすべき社員教育を客がしている。頼まれたわけでもないのに勝手に。
 昔は「うまいこと言うな〜」と感心するような営業がいたが、最近そういうセールストークに出会ったことことがない。
 客は商品に対してカネを払うのではなく、セールスの「うまいトーク」に対してカネを払ってもいいと思ったものだ。成熟社会になればなるほど、その傾向は高まる。すでにモノは社会に溢れており、絶対必要なモノはないからだ。
 つまり、人が何かを買うのは商品の機能や性能、あるいは商品そのものでもない別のなにか、つまりプラスアルファーに対してカネを払うのである。
 それにしても、他人の節介を焼くのはもうこれぐらいにしなければと思っている。でなければ、年寄りと釘頭は引っ込むがよし、と言われかねない。



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