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中小企業は求人難、若者のレベル低下で困っている。(2)


竹田 様

 お久し振りです。お変わりございませんか。

 今回はまた随分難しいテーマを投げかけられました。
少し考えさせてください。

若者教育をどうするか

 私なりに色々考えてもみますが、若者の学力不足、考える力不足は今に始まったことではなく、少しずつ、それこそぬるま湯に漬かるように緩やかに下降曲線を描いていったのではないかと考えています。
 そういう意味ではゆとり教育の悪弊という問題より、もっと根が深く広い社会の問題ではないかと考えています。
 それに拍車をかけているのが少子化で、私立の高・大学は経営のために一定数の学生を確保せざるを得ず、ハードルを下げてでも入学させるようになっているようです。
そうなってからでも恐らく10年近くたつのではないでしょうか。

 加えてケータイ、さらにスマホの普及で「考える」「工夫する」ことがなくなり、ネット検索と、細切れ知識、短文の頻繁なやり取りで、知識もコミュニケーションも間に合っているようで、このことと学力低下が必ずしも無関係とは言い難いと思うのですが。少なくとも考える力の低下とは。

 日本的教育方法の問題=詰め込み、暗記教育が言われ、その反動として「考える力を養う」教育−>「ゆとり教育」と進んだのではないでしょうか。
 ところが本来の問題、「考える力」「多様性を身に付ける」というところが置き去りにされ、「授業時間の削減」という「目に見える」形を導入したので、肝心な基本教育すら疎かになったように思います。基本が身に付いてなければ応用はできません。
 私は何事につけ「なぜ」という疑問を持つことが大事ではないかと考えています。それが好奇心、興味になり、つい余計なことに首を突っ込んだりしていますが。

 今の若者は物質的には恵まれていますから、何かに飢えるということはないでしょうし、貪欲さもないと思います。学問に対しても同じことが言えそうです。
 自分達の時代を絶対視するわけでも、それを押し付けるわけでもありませんが、デジタルに慣れ親しんだ世代に「辞書を引いて調べろ」と言ってもムダだとバカにされます。
 デジタル世代にとって「調べる」=「検索する」です。スマホがあればすぐ、その場で調べられますし、答えが出ます。辞書を何冊も開いたり、いろんな資料に当たる必要はないのです。彼らに言わせればそれはムダな時間ということになるのでしょう。
 実は1年近く前、20代の若者からこう言われたことがあります。
「鉛筆をナイフで削れと言われても、鉛筆削りがあって、差し込めば自動で削ってくれる時代に、なぜナイフを使って鉛筆を削らなければならないんですか」
 もちろん、これは例えであって、彼女は企業の社員研修に近いようなことを仕事でやっていると言っていました。要は古いアナログ世代ではデジタルで育った今の若者教育はできない。やり方が時代遅れで、合っていない。若者には若者のことがよく分かっている自分達が教育した方がいいというわけです。

 そう言うのを聞きながら、私はなぜか五木寛之氏の小説「艶歌」(うろ覚えなので本の題名は違っているかも)に出てくる「艶歌の竜」のことを思い出していました。時代遅れになり忘れ去られた(引退した)老プロデューサーが再度、歌手を育てる話。いま話題の「下町ロケット」に出てくる構図と言った方が分かりやすいかもしれません。「今頃、手作業ですか。手作業がいいと思い込んでいる中小企業が多いが、それは間違いだ。時間のムダだ」と帝国重工の人間にバカにされる、あの構図です。
 たしかに帝国重工の社員が言うことは真実です。手作業、手作りがいいわけでも、手作業、手作りだからいいモノができるわけでもありません。むしろ機械研磨の方が正確かつ均一に研磨するでしょう。
 だが、あるレベルを超えた熟練工の手作業には及ばないのも事実。カメラのレンズ磨きがいまでも人手によるものと同じです。ただ、そのレベルに達していなければ、精密加工機械に任せた方が安心だし、ロスが防げるのも事実です。
 ここまでくると、後は会社がどの方向を目指すのかということではないでしょうか。
                                               (3)に続く

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