人口1万人の農村部に出店
小さいのは店舗だけではない。実は商圏も業界常識よりははるかに狭い。一般的にホームセンターは3万〜5万人商圏とされている。ところが、コメリは商圏1万人。つまり他社は最低でも3万人程度の人口がないと出店しないのに対し、コメリは人口1万人で出店する。だから郊外どころか田舎の農村地帯にも店舗があるのだ。
「園芸・農業用品や工具・金物に特化した地域密着型の小型ホームセンター」。
同社では「ハードアンドグリーン(H&G)」をそう定義している。もちろん、それらしか販売してないわけではない。それらの商品を揃えていることに特色を出しているわけで、この点が同業他社と大きく異なる。
もちろん同社の店舗は小型店舗のみではなく、売り場面積1万uの大型店「パワー」や、それに次ぐ規模の「ホームセンター(HC)」も展開しているが、私が注目したいのは「H&G」の戦略だ。
一般的にホームセンターはDIYがスタートだったことからも分かるように、都市住民のニーズに応える形で発展してきた。ところが、「H&G」が対象としている消費者は都市住民ではなく農村住民。かつてこの層を対象にしていたのはJAである。ところが、JAが過疎化に対応できなくなり(というか、JAという肥大化した組織が効率経営に失敗、また農村住民のニーズに対応できなかった)、農村部はますます商業空白地帯と化していた。コメリはそこに対応し、成長してきたのだ。
このコメリの成長戦略は多くの中小企業にとって参考になる。
いままで「消費者」がいないと切り捨てられていた地域でも、やり方いかんで消費者は存在する、ということである。
コメリの成功に学ぼう
では、コメリは農村部の需要にどう対応していったのか。
まず、H&Gが目指したのは「農村のホームコンビニ」。生活必需品を中心に、小さな店舗ながら鍬や鎌など野良仕事に必要なものをほとんど揃えている。これは大きな特徴であり、他社との差別化になっている。実際、こうしたものは都心部のホームセンターで目にしたことはない。
もう一つの特徴が野菜・果物苗を含む園芸関係品の充実である。
実際、コメリの店舗に行くと、この規模の店舗にもかかわらず欲しいものがほぼ揃っていることに気付くはず。
JAが失敗したのはコストダウン経営が出来なかったこともあるが、それ以上に問題なのは最低限の必需品を「揃えただけ」だったことにあるだろう。
地域の個人商店が衰退したのも同じ理由だが、人は店に必要なものだけを求めているわけではない。新しい商品を見たり・発見する「楽しさ・面白さ」、店内で出合う「ワクワク感」などを同時に求めているのである。そういうものを提供できない店舗から消費者は離れていくのだ。
こうしたことはなにも販売面だけではない。製造する側にも同じことがいえる。
両者ともに失敗するのは次のような思い込みである。
1.消費者がワクワクするようなもの、デザインやカラーが楽しい商品を作っていない。
2.「必需品」のみを作っている。
3.農村は、高齢者は、工場は、こういうものを求めている、という思い込み。
4.中途半端な品揃え、中途半端な技術に終わっている。
5.既成観念から脱せず、別の角度でマーケットを見ようとしない。
以上見てきたように、コメリの成功から多くのことが学べるのではないだろうか。もちろん、「H&G」成功の要因はここに述べただけではないが、私が最も注目し、かつ学ぶ点が多いと感じたのは、繰り返しになるが「農村戦略」である。
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