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グローバルとローカル〜飽和時代の商品欠乏化(3)


団塊の世代に期待したい担い手
経営感覚と知恵、人脈を生かす


 では、現在、商品欠乏化に悩んでいる人達に商品を届ける方法はないのか。
方法はある。
しかし、利益優先、効率優先のビジネスではダメだ。
ダメと言うより、そうしたビジネスモデルは成りたちにくい。
可能性があるのは非営利の事業、非営利の出張販売だ。

 なぜ、非営利でなければならないのか。
 1つは既述したように、通常のビジネスのような利益確保が難しいからである。
そのため利益は二の次にした、「先義後利」の精神をさらに1歩進めたボランティア精神(ボランティアでやれということではない)が要求される。
 2つめはビジネス的に考えると、売れるもの、必要なものを出張販売に持っていこうとするからで、これではダメだ。
おかしなことを言うと思われるかもしれないが、その理由は後述する。

 ところで、この事業の担い手は誰か。
もちろん、誰でもOKだが、特に団塊の世代前後の人達に期待したい。
 その理由は定年退職をし、時間的な余裕がある人が比較的に多いからである。また経営者の場合も社長職を後継者に譲り、自らは会長職に留まっている人、あるいは近い内にそうしたいと考えている人が多い。
 「後継者へのバトンタッチをどのようにすべきか」の稿でも触れたが、バトンタチをした後も以前と変わらぬように毎日出社するのは、他にすべきことが見つからないからだ。
 いずれにしろ、この世代に共通しているのは、精神的にも肉体的にもまだまだ元気だから、何らかの形でまだ社会に関わり続けたいと思っていることだ。ただ、彼らにとってはいままで社会とは会社でしかなかったが、それはその他の形を知らなかっただけである。
 要は会社以外の方法で社会に関わることがあれば、しかも、それが多少なりともビジネスや社会貢献ということに関係するならば、彼らがこの事業の担い手になる可能性は大いにあるだろう。

 もう一つ、この世代、特にバトンタッチを済ませた中小企業経営者に積極的に関わってほしいと考えている理由は、彼らの経営感覚と知恵、人脈がこの事業に生かされるのではないかと思うからである。

「楽しみ」を運ぶことが重要

 さて、後は商品欠乏化地域で販売する商品である。
ビジネス的に考えると、売れるもの、必要なものを出張販売に持っていこうとするからダメだ、と先に述べたが、その理由である。
 従来の移動販売はニーズの最低限満足を目的に運営されている。つまり無店舗地域へ魚や肉、卵といった、自給できない食品で、なおかつ要望が高いものを車に積み、販売している。
 もちろん、こうした必需品を届けることが第一の使命である。しかし、これでは味気ない。これでは生きるために物を買っているみたいなもので、ほとんど楽しみはない。楽しみがないから、最低限の必要なものしか買わなくなる。だから購買高は上がらない。むしろ下がっていく。そのため生協なども食品以外の通販に力を入れているのが実情だ。

 ウインドウショッピングという言葉に象徴されるように、ショッピングは必要なものを買うだけではなく、その商品を食べたり、身に着けた自分をあれこれ想像する夢を含め、買う行為自体を楽しんでいるのだ。そこには商品に触れたり、他の商品と見比べて選ぶという行為も入ってくる。こうしたことが満たされるから、人は買い物に喜びを感じるのである。逆にいえば、商品が選べなかったり、他と比較できない買い物には人は楽しさを感じないのだ。
 地方の小さな商店が量販店に駆逐されていくのは単に資本の論理だけでなく、買い物をする楽しさを提供できていないことにもある。

 そろそろ結論を急ごう。
もう読者もお分かりだと思うが、移動販売の成否は必需品のみを持参して販売するか、楽しさも持参するかの違いである。
必需品のみを運ぶ方が効率はいいのは明らかだ。
楽しさを運ぼうとすれば売れるかどうかわからないムダなもの、例えばパン類でいえば食パンやアンパンのようなものばかりではなく、メロンパンやシュークリームやショートケーキなどを持って行き、「勧める」のだ。
 この「勧める」という行動が重要なのだ。「勧める」のは情報を伝えることである。いま都会ではこんなものが流行っているとか、全国で人気だとか、若い女性の間で人気だ、といった情報を伝えることで会話が生まれる。この会話が高齢者を元気にしていくのだ。
 これはデジタルではできない。アナログの効用である。

 そんな楽しさまで運ぼうとすれば軽バンでは無理だ。大型トラックで行かないと。それがやれるなら地方に小型スーパーが作れるではないか、と反論されるに違いない。
たしかにそうかもしれない。一人で一度に全部やろうとすれば。
 だが、こう考えたらどうだろう。
何人かがグループを組み、グループで行動する。そうすれば一人一人は軽バンでも何人(何台)かが集まれば大型トラックと同じになる。
行動の仕方は一度に何台かが結集して一緒に動いてもいいし、それぞれに曜日を決めて移動販売してもいいだろう。
 大事なのは生活に必要なものだけを運ぶのではなく、一見ムダに見えるもの、つまり選べる楽しさ、目新しい情報を聞く楽しさ、目新しいもの、珍しいものに触れる楽しさを一緒に運ぶことである。

 この移動販売は地方(の高齢者)を元気にするだけでなく、この事業の主たる担い手になって欲しいと考えている団塊の世代も元気になるだろう。それは顧客を楽しませるにはどういう商品を持って行った方がいいか考えなければならないからで、そのためには自らも常に新しい情報を仕入れなければならないし、情報を仕入れるためにあちこちに出かけなければならないだろう。
まさに一石二鳥の事業である。いや、地方の活性化にも役立つなら一石三鳥だろう。



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