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林原グループの経営破綻が教えるもの(1)


 岡山を代表する企業の一つ、林原グループ(岡山市)が経営破綻し、2月2日に会社更生法の適用を申請した。1月26日に私的整理の1種である事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請したわずか1週間後のことである。あまりの速さにいろいろ取り沙汰もされたが、それにしても、なぜ林原は破綻したのか。なぜ、メーンバンクは林原の破綻を見抜けなかったのか。同グループ破綻の要因を探ることは、多くの企業にとって経営を誤らないための参考になると思われる。

評判の地場優良企業がなぜ?

 林原は岡山県内と製菓メーカーでは知らない人がいないほど有名だが、それ以外の人はあまり知らないと思うので、まず概略を紹介しておこう。
 本社は岡山駅の近くにあり、歴史を感じさせる古い建物。私は外からしか眺めたことがないが、個人的にはこの佇まいは気に入っている。
 創業は1883年。水あめ製造がスタートで、一時期、生産量日本一を誇ったこともあったようだ。ただ戦後、砂糖が安価に生産されるようになると水あめ需要は落ちていくが、昭和30年代にデンプンから各種糖質を開発することに成功。それをメーンに研究開発型企業として発展してきた。
 林原の名前を有名にしたのは食品、化粧品業界では知らない人がいないトレハロースや、抗ガン剤インターフェロンの開発。特にトレハロースは、それまででんぷんからの安価な開発は不可能と言われていただけに、それに成功した同社の貢献は大きい。
 こうした開発を支えていたのが豊富な資金力である。その資金力を生み出していたのが水あめ製造で儲けた資金で買い求めた土地で、土地の担保力が資金を生み出していたといえる。

 林原グループの中核企業は糖質原料の製造をする(株)林原に、食品・医薬品原料の研究開発及び感光色素の研究・合成の(株)林原生物化学研究所、各種食品原料の販売を担当する(株)林原商事、そしてグループの不動産管理をする太陽殖産(株)の4社。このうち太陽殖産(株)を除く3社が会社更生法適用を申請した。負債総額は1318億円。
 林原の破綻原因についてはいろいろ言われているが、以下、代表的なものを挙げながら検証してみよう。

1.株式非公開の同族経営

 巷間よく耳にするのがこの言葉である。
たしかに同社は非上場企業であり、前社長の林原健氏と前専務の林原靖氏は兄弟という、中小企業ではよく見かける同族経営会社である。
 なぜ株式の非公開が問題と言われるのか。
非公開企業は経営がオープンでないから、経営実態がよく分からない。だから粉飾決算も見抜けなかった、というのが非公開を問題とする人達の代表的な見解である。
この論に従えば、株式非公開=悪というイメージでなる。少なくともそう思わせるものがある。

 たしかに株式の公開が経営のオープン性とイコールなら、上記の論も成り立つ。
しかし、株式の公開と経営のオープン性は必ずしもイコールではない。
というのは上場企業の中にも粉飾決算を行っている企業もあり、それらが時々摘発されていることからも分かる。逆に、非上場企業ながら経営のオープン性を確立している企業もある。
 こう言えば、それは一部の企業にすぎない、と反論されそうである。それは認める。全体的には上場企業の方がオープン性という面で圧倒的に優れている。
しかし、株式非公開=マイナスと捕らえるのは間違いだろう。

 例えば前社長の林原健氏は2002年5月30日付の中国新聞でインタビューを受け、次のように答えている。
 「大企業は上場していて、株主を納得させられる研究しかできない。変なことをしてたら、株主訴訟を起こされますからね。開発期間で3〜4年ぐらいのものしか手をつけられない。うちのような同族経営のメリットが、息の長い研究開発です。10年かかる研究はいっぱいある」
 株主利益のことばかり考えずに長期戦略で研究、経営に当たれるのは非上場企業の有利さだろう。
 要は株式の非公開が今回の破綻要因、少なくとも主要因ではないということだ。

                                                 (2)に続く

気分爽快。息キレイ JINTAN116Herbs


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