2013年11月26日、ジーンズメーカー最大手のエドウインが私的整理の1つである事業再生ADR手続きの利用を申請し、実質経営破綻した。これでジーンズ3大メーカーといわれたボブソン、ビッグジョン、エドウインがすべて経営破綻したことになる。それもこの数年で。
なぜ、ジーンズメーカーは相次ぎ経営不振に陥ったのか。その背景を分析していくと、そこには広く製造業が抱えている課題、問題点も見えてくる。
本業外で巨額の損失
最初に行き詰まったのはボブソン。2009年に営業権を投資ファンドに譲渡し、創業家が経営から撤退した。しかし、その後も同社の経営内容は改善されず、2012年4月に民事再生法の適用を試みるも結局6月に破産(現在、創業家が再び商標権を買い戻し、販売を続けている)。
その頃からビッグジョンの経営不振も噂され、ボブソン同様に営業権を譲渡するのではと一部で見られていたが、2013年4月に官民ファンド「おかやま企業再生ファンド」の支援を受け、現在再建中である。そして今回のエドウインだ。
青春時代をリーバイス、ボブソン、リー、ラングラー、ビッグジョン、エドウインという名とともに過ごしてきた世代には、これらの名前が次々に消えていくのは寂しい限りだろう。因みに私は上記ブランドではリーバイスを除き全て履いてきたが、いまでも履いているのはエドウインだ。
エドウインの直接的危機は2012年8月に発覚した200億円の損失隠し。証券投資の失敗で200億円以上の運用損が発生し、それらを隠した決算報告書を融資を受けている金融機関などに提出していたようだが、発覚のきっかけは8月に経理担当取締役の自殺。同担当者が使用していたPCにそのことを示すメールの内容が残されていたという。
それだけで済めばまだよかったが、その後300億円を超えるデリバティブ損失、600億円にも及ぶ資産架空計上、500億円を超える債務超過状態などが明らかになったというからたまらない。しかも10年以上、粉飾決算を続けていたようだ。
こう書きながら、なにやら既視感を覚える。歴史は繰り返すと言われるが、オリンパスグループ、林原グループを挙げるまでもなく、過去、何度も見てきたお馴染みの光景だ。
粉飾決算を続けるパターンは大体2つに分かれる。1つは投資の失敗で、その損失隠しのために行うパターン。バブル期には猫も杓子も投資で儲けるのが当たり前というムードがあり、本業よりそっちで利益を上げている企業も多かった。
ところが、リーマン・ショックで一転。損失が大きすぎるところは処理できず、損失隠しの粉飾に走る。それでもまだ本業がしっかりしていて利益を出していたところはなんとか踏み止まれたが、本業の売り上げが減少傾向に陥っていたところは、粉飾決算が露呈した段階でジ・エンドだ。オリンパスは前者、林原は後者だろう。
エドウインの場合はどうか。ジーンズ市場は2009年以降、完全に縮小傾向である。しかし、競合が次々に破綻し消えていく中で残った老舗メーカーがエドウインだから、マーケットは縮小しても競合も減少している。競合の減少は自社のシェアを高めるとともに、いたずらな価格競争も改善されるはずで、利益率はむしろアップする。同社もそうなるはずだった。本業に注力していれば。
(2)に続く
経理担当の横領・着服に注意
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