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日本の製造業はなぜ衰退したのか(4)
〜強さの秘密はアナログ技術


強さの秘密はアナログ技術

 それにしてもソニー、パナソニック、シャープと、日本を代表する企業がなぜこれほど次々と危機に見舞われているのか。かつては「ジャパン アズ ナンバーワン」とまで言われたのに。
 あの直後からである、日本企業の勢いに陰りが見えだしたのは。あの頃、日本企業の強さの理由として盛んに以下のような言葉が言われた。「日本人は手先が器用だから、半導体のような細かいものを作るのに向いている」と。
 実はこの言葉こそ、日本企業凋落の理由を現していた。「手先の器用さ」が通用するのはアナログの世界であり、その分野で日本企業は強さを発揮していたのである。

 現在、唯一といえるほど日本企業が強さを発揮している分野は一眼レフカメラだ。フィルム時代からデジタルに変わっても、一眼レフカメラではニコン、キャノンの日本企業が世界でもトップを占めている。
 なぜ、他社はニコン、キャノンの2強に追い付けないのか。一つにはカメラの歴史の中でアナログ時代が長かったことと、もう一つは、いまでもアナログが重要な部分を占めているからである。
 デジタルが比較的真似しやすい技術であるのに対し、アナログ技術は簡単に真似することができない。それは扱う人の熟練度や勘に頼っている部分が少なからずあるからで、それらを数値化することはできないからだ。少なくとも現段階では。
 デジタルカメラのどこにアナログ部分があるのかと思われるだろうが、まずレンズである。レンズ磨きは機械ではできない(低価格コンデジなどに装着されているレンズは別)。正確に言うと、レンズ磨きの最終仕上げは職人による手作業なのだ。カメラの命はレンズの性能、それは光の透過率と屈折率であり、いかにレンズ表面を凹凸なく磨くかという技術にかかっているわけで、いまだこの部分は機械ではできないのだ。職人の指先の感触にかかっていると言っても過言ではない。
 もう一つはセンサーの処理技術で、これには長年蓄積したデータがものを言う。
 この2つが満たされなければいいカメラを作ることができないが故に、昨日今日カメラ業界に参入した企業では一眼レフカメラを作れないのである。

牙城すら守れない日本企業

 しかし、そう、しかし、だ。賢明な読者が言いたいことはよく分かる。
デジタル技術が機械やソフトに依存しているのとは違い、アナログ技術は人に依存しているのである。それなのに、日本の製造業は大手企業を中心にリストラで、人をコスト扱いし、首を切っているではないか。これでは日本の製造業が強みを発揮できるはずがないし、将来もないだろう、と。
 その通りである。代わりに中国、韓国企業が何をしているかと言えば、彼らは定年退職したり、早期退職制度という名の下に首を切られた(この言い方が気に入らなければ、退職を迫られたと言い換えてもいいが)日本の技術者達を自社に招いたり、高額で引き抜き、彼らの技術を自国のものにしようとしているのだ。人の育成は機械を入れ替えるようなわけにはいかず、5年、10年はかかるということを知っているからだ。

 リストラで首を切る日本企業と、顎足付きで招聘する韓国、中国企業。どちらを選ぶか彼らに聞くまでもないだろう。定年退職後の技術者は金の問題だけでなく、自分の技術を活かせる場があることに喜びを感じるだろうし、若手技術者も韓国、中国企業が技術を習得してしまったら自分はお払い箱になると分かっていても、日本国内で自分を必要としてくれる企業がない以上やはり行くだろう。それぞれに生活がある以上、「愛国心」の問題を振りかざしても詮なきことだ。それでも敢えて一つだけ苦言を呈したい。中小企業の技術指導をしていた公務員が退職後にすぐ韓国、中国などに渡り、かの国で同じように技術指導をするのは止められないのか。退職後少なくとも数年は同技術の指導をできないように法律で規制することぐらいはしてもよかったのではないだろうか。もちろん、それをしたからといって、今の流れを止められるわけではなく、せいぜい数年遅らせることぐらいしかできないと分かってはいるが。

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