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AOKIの進出で激化する九州紳士服戦争(2)フタタ


 AOKIが九州市場を攻めながら、一方の手で握手を求めてくるのはそれなりに理由がある。
 最大の理由は紳士服市場の縮小である。
07年以降、いままで最大の顧客層だった団塊の世代が続々と退職しだした。1線を退くとスーツを着る機会は激減する。少なくともいままでのようにスーツを新調しなくなる。どちらかといえばスーツよりカジュアルウエアの方だろう。
 スーツがカジュアルウエアに替わるということは、まず単価が下がる。
次に、スーツに合わせてワイシャツやネクタイも買っていたのが、カジュアルウエアになると、極端にいえばせいぜい綿パン程度しか買わなくなるから購買額そのものも下がる。量販店にすれば1人当たりの売り上げ単価、総売上ともにダウンするわけだ。
 この現象が一時的であればそれほど影響はないが、少子高齢化に歯止めがかからず、今後も人口が増える気配はない。つまり、紳士服市場は長期に渡り縮小傾向が続くのである。そこにもってきて、夏場のクールビズファッションだ。
 当初、業界はクールビズを新しいニーズの創出と前向きに捕らえようとしたが、思惑とは逆に脱ネクタイ・スーツが一層加速するだけに終わっている。
 業界に残された道はカジュアル分野を含め、いかに新しい業態開発ができるかだが、一部に非衣料分野への進出を図る動きもあるが、非衣料も含め新たな業態開発にいまだ各社とも成功したとは言い難い。となると、残る道はM&Aでシェアアップを図ることだろう。

 AOKIにとって頭が痛いのはトップの青山との開きである。
業界2位の売り上げを誇るとはいえ、青山とは売上高で倍以上の開きがある。市場の縮小傾向からみて、今後、生き残れるのはよくてせいぜい業界3位まで。となるとAOKIに残された道はM&Aか、出店による売り上げアップしかない。
 即効性があるのはM&Aによる売上高アップである。単純にいえば、経営統合した瞬間から売上高は両社の合計数字になる。ただ両社でエリア内に重複する店舗がある場合は単純に両社の総和というわけにはいかないが。

 その点、AOKIは九州へは未進出であり、九州を地盤とするフタタとの提携は最も望みたかったところだろう。
 しかし、世の中そう思惑通りには進まないもので、当の相手のフタタには振られてしまった。するとAOKIに残された戦略は
1.新たな提携先を探す 
2.フタタにコナカと別れ、AOKIと提携するよう迫る 
3.未進出の九州・四国での出店を進める
 のいずれかしかない。
 現在、AOKIの取っている戦略は2と3だが、2が成功するのは力をバックに交渉した時である。ところが、今回AOKIが取っている作戦は、フタタの創業者であり現相談役の二田義松氏とのフレンドリーな関係を利用した「寝返り作戦」あるいは「懐柔作戦」のように見える。
 この作戦が成功するのは二田義松氏がフタタの過半数の株を持つ大株主の場合しかなく、すでにコナカの完全子会社になっている現在では成功の可能性は限りなく低い。

 となると、現実的な戦略は3の単独出店だが、それには資金と時間がかかる。
今後5年間で50店舗、九州に出店する目標を掲げているが、すでに九州地区には青山83店、コナカ・フタタグループ81店、はるやま商事が50店出店している(07年12月時点)。最後発のAOKIが果たしてそこまで出店できるかどうか。

 ここでちょっと視点を変えて、AOKIの店舗空白地帯を見てみると、九州・四国が店舗ゼロ地帯になっている。コナカも同じ状態だったが、フタタと組んだことで九州への進出を果たし、その面ではAOKIに一歩先んじた。
 気になるのは業界4位のはるやま商事である。同社は本社所在地が岡山市で、中国、四国、九州地区にはトップの青山に次いで店舗数が多い。逆にAOKIが強くてはるやま商事が弱いか未進出地区は関東、北海道。圧倒的に強いのは地元の中国地区、AOKIと競合するのは関西地区で、ここでははるやま商事の方がAOKIより店舗数は多い。

 このように見ていくと、両社の提携は多少調整が必要な地域もあるが、必ずしも非現実的とはいえないだろう。
 もちろん現実には、両者の企業文化・風土の違いとか、トップ同士の考えの違いとか様々な要因が絡んでくるので、果たして提携という話になるかどうかは別だが、業界2位と4位が組むという話は充分あり得る。
 いずれにしろ、AOKIの九州進出を機に紳士服量販業界のもう一段の再編が起きるのはほぼ間違いないだろう。
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