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「人を信用すれば企業が生きてくる」
〜公協産業グループ・國廣秀司会長の経営哲学(2)


資金がないから知恵を出した

 独立して会社を設立したのが1973年12月。「廃棄物の取り扱いを通じて、世間に役立つ協力をしたい」という思いを込めて、社名を公協産業と決めた。
 業務内容はそれまでやっていた廃油の回収と販売。廃油の回収先はガソリンスタンドや整備工場、運送会社などで、そこから回収した廃油を不純物が多いものとそうでないもの仕分けし、不純物が含まれていないものは再生重油として販売できた。
重油よりは価格安のため燃料を大量に使用する石灰、セメント、アルミ、製紙、鉄鋼業界などが販売先になった。

 「お金がなくてスタートしたのがよかったんです」
創業当時をこう振り返る國廣氏。資金がないから他社と同じことをしていては負ける。だから、その分知恵を出し、ドラム缶に入れて置かれている廃油を2段階に分けて回収するという独自の回収方法を考えついた。
「ドラム缶の中では不純物が混じった悪い廃油は下に沈殿し、いい廃油は上の方になるから、その上澄みの部分だけをまず回収していったわけです。下に沈んだ部分(スラッジ)は後で回収してました。すると収集した段階ですでに分類が済んでいる。持ち帰った段階で回収した上澄みの部分は製品(再生重油)として販売できるし、分離させる設備がいらない」
 回収が二度手間のように見えるが、この2段階収集方法がうまくいった。

 再生重油の販売先はそれまでと同じように公衆浴場業界から始めた。その後、販路を拡大していったが、最初の開拓先が岡山市本社のオハヨー乳業である。
 再生重油は重油に比べて価格が安いのがメリットだが、灰分がよく溜まるのがデメリット。このメリットとデメリットをどう考えるかだが、オハヨー乳業はボイラーを1基ではなく複数基設置してローテーションを組んで使うことでデメリットを解消していた。灰分が溜まってくると次のボイラーに交代して稼働させる。その間、最初のボイラーが冷えるのを待ち、溜まった灰分を掻き出す。少なくともボイラーが3基あれば、このローテーションでゆっくり回せることになる。
 こうすることで年間にボイラー1基分が十分買えるほどのコストダウンになり、メリットがデメリットを上回ったのだ。

 同社には「応援もしてもらったんです」と國廣氏。廃油の収集コストが上がった時は販売価格の値上げをお願いすると快諾されただけでなく、月末締めの翌月10日現金払いにしてもらえたのだ。
 設立間もない企業にとって一番の問題が資金繰りなのは言うまでもない。最近は変わりつつあるとはいえ、支払いは手形というのが日本の商慣行だ。手形は受け取ってから換金するまで、それなりに日数がかかる。30日、90日手形は当たり前。中には7か月サイトの「台風手形」、10か月サイトの「お産手形」と呼ばれるものもあった。「お産手形」で支払われたりすれば、10か月間の運転資金がなければ資金ショートすることになる。それを考えれば10日後の現金支払いは厚遇である。こうした「応援」もあり、資金なしにスタートしたにもかかわらず、設立時から金に困ることはなかった。

 オイルショックも同社には追い風だった。安い再生重油の需要が、大量に燃料を消費する工場等で高まり、販路は石灰業界、セメント業界等に広がりをみせてきた。
すると面白いもので、今度は先方から要望が出てくる。「うちは廃液も出るんだけど一緒に収集してくれないか」と。
 それに応えるように取り扱い品目を増やしていく。そのうち下に沈殿した油泥部分(スラッジ)にも価値が出てきた。「カロリーを持っているからセメント工場が代替燃料として使えるわけです」。さらに「セメント業界がお前のところにあるものは持って来い」と言われ、いままで処分の対象だった汚泥、燃え殻、廃活性炭、塗料カス、油泥等がセメントに混合する材料としても買ってもらえだした。
 ついには平成19年(2007年)12月、住友大阪セメントの高地工場の敷地内に同社の高知工場を設置するほどの信頼関係が出来上がった。産業廃棄物のリサイクル先であるセメント工場内に産廃の中間処理施設が入ったのはもちろん業界初である。

 同社が目指しているのは完全リサイクル−−。だが穿った見方をすれば、それは業界のスローガンみたいなもの。問題はそれがどこまで徹底されているか、処理過程で有害物質を排出していないかどうかだ。それを判断する材料の1つになるのが現地視察(工場見学)である。
 厳密な査定には専門的なデータ検証が必要なのは言うまでもないが、専門家でなくても5感を総動員して観察すれば結構見分けられるものだから、疑問を感じれば現場視察を申し込んでみるといい。その時の反応で、その業者が信用できるかどうかもある程度分かる。
 1.まず工場視察がオープンかどうか。
 2.見学を申し込むと1週間以上先の日にちを予約されられるかどうか。不都合な真実を隠す必要がなければ、極端な話、これからでもOKになるはず(担当者の都合もあるから今日の今日というのは難しいこともあるが)。
 3.工場視察中に見学ノーの箇所があるかどうか。それぞれ企業秘密の箇所があるのは理解すべきだが、「ここはダメ」という見学ノーの箇所が多ければ、見られては困る不都合な部分があると勘ぐりたくなるだろう。
 4.異臭や目鼻への刺激臭があるかどうか。

 このような点をチェックすれば、地域住民でもある程度の判断ができる。とりわけ会社の姿勢はよく分かるはずだ。
 さて同社の場合はどうか。驚くほどオープンで、撮影禁止も先方企業名が入ったものだけだった。また、現場で擦れ違う従業員達が礼儀正しいのに感心した。冒頭、國廣氏が言った「普通にやって、おたくはいい会社ですね、と感謝される」ということはこういうことを指しているのだろう。
                                             (3)に続く

 


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