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「人を信用すれば企業が生きてくる」
〜公協産業グループ・國廣秀司会長の経営哲学(1)


「最近、こんないい商売はなかったなと思っています」。公協産業グループの國廣秀司会長はにこやかにこう切り出した。「だって、普通にやって『おたくはいい会社ですね』と感謝され、仕事が増えるんですから」。

人を信用すれば企業が生きてくる



 私が國廣氏に本社で会ったのは今回が2度目。最初に会ったのは10年前だったので、改めて産業廃棄物処理業に参入したきっかけを尋ねた。すると上記の言葉が返ってきたのだった。
 なるほど、そうかもしれない。氏の言葉を聞きながらそう思った。産廃業界も近年は随分変わってきたとはいえ、まだまだ不法処理が後を絶たなかったり、処分場を巡って近隣住民との間で問題を抱えたりしているところもあり、必ずしもイメージがいいとは言い難いところがある。
 その点、同社は業界の中でも少し変わっている、という印象は最初の取材時から感じていた。現場の社員が実に礼儀正しいのだ。

 私は企業を見る時、現場と、そこで働く社員の態度を見るようにしている。トップが語る夢や理念、企業の方向性などより、物言わぬ現場の方がよほど現実を語りかけてくれるからである。
 もう一つは、多少意地悪いと思われるかもしれないが、何年後かに再取材し、前回聞いた話と同じか、齟齬がありはしないか、その後の変化などを確かめたりもしている。

 さて國廣氏が事業を始めたきっかけである。当初から産廃業界への参入を考えていたわけではなく、ある意味、成り行きのようなところがある。もともと将来は独立して起業をと考えていたようだが、大学卒業後入社したのは丸紅の子会社。流通卸が主業務のような会社で、そこで10年ぐらい修行し、その後、独立・起業という青写真を描いていたようだ。
 その計画が崩れたのは入社1年が経つか経たないかという頃。学生時代の友達がやって来ては「俺の仕事手伝ってくれないか」と口説きにかかるのだ。いや、ダメだ。俺には計画があるから、と断わっても、毎日のようにやって来る。とうとう根負けして友達の仕事を手伝うことになったのが廃油の収集と販売。
 「友達の姉さんの嫁ぎ先が銭湯だったんですよ。銭湯はボイラーを炊くものだから、回収した廃油を銭湯業界に販売していたんですが、後に船舶関係にも手を広げ、これがドル箱になったんです」

 しかし好事魔多しというか、オーナーである友達が高利貸しから借金をしていたことから黒字倒産。金融業者が乗り込んできて社長になったので、それを機に会社を辞めて自分でやろうと考えた。
 ところが「お前が辞めたら俺はこの仕事のやり方が全然分からないから困る」と、乗り込んできた新オーナーに説得される。それはそうだろう。借金のカタに会社を取っても業務内容が分かる人間がいなくなれば事業は回っていかない。
 「國廣、お前にすべて任せるから、お前が社長のつもりで好きなようにやれ」と全権を委譲される。人は信用されて任されれば、より力を発揮するもので、実際、社員も今まで以上に仕事をするようになり業績はさらに上向いていった。

 この時の経験が良くも悪くも後に生かされることになる。
 「人を信用すれば企業が生きてくる。なにかあった時には尻拭いをすればいいということを教わったし、ものすごく勉強させられました」と國廣氏。
 それから1年経った頃、友達だった前社長が会社を買い戻しに来た。だが、一緒に仕事をし始めて分かったのは、「それまで言っていたことが嘘ばっかりだったので、もう信用できない」と退社。
                                             (2)に続く

 


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