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21世紀の鉱物資源ゼオライトから新素材ソフトセラミックスを開発

日本ゼオライト株式会社  代表取締役社長 佐藤 隆
福岡市早良区百道浜2ー1ー22 福岡SRPセンタービル5F / tel 092-852-3485

 新規事業の育成を目的に、資金調達面からベンチャー企業を支援する中小企業創造活動促進法(中小創造法)が施行されて2年半。九州通産局管内では198社(平成9年8月末現在)が中小創造法の認定を受けている。その内福岡県内の企業が73社と圧倒的に多く、県内で急速に新規事業の芽が育っているのが分かる。

吸脱着・イオン交換性能
ソフトセラミックス

 日本ゼオライト梶i福岡市早良区百道浜2ー1ー22、佐藤隆社長、資本金1000万円、рO92ー852ー3485)もそんなベンチャー企業の一つで、「ゼオライトを用いたセラミックスの製造・販売、その他エコロジー関連事業を主体とした研究開発」を事業内容としている。設立は平成2年8月。
 ところで、社名にもなっているゼオライトとは、一七五六年にスウェーデンの鉱物学者クロンステッドにより発見された鉱物で、ギリシャ語のゼオ(沸騰)とリトス(石)からこう名付けられた。加熱すると沸騰し水蒸気を発生するが、水分が存在する条件下では再び吸着する性質を持っていることから、日本では沸石とも呼ばれている。
 ゼオライトの代表的な性質としては吸脱着能やイオン交換能などが認められており、イオン交換樹脂が発明されるまでは硬水軟化材としても広く活用されていた。またゼオライトは3〜15オングストロームの均一な細孔を有する唯一の多孔体であり、孔径に応じて特定サイズの分子を吸着することから一種の分子認識機能を有することなどが分かっている。
 「ゼオライトは21世紀の鉱物資源と呼ばれており、河川の浄化、酸性土壌の中和、農薬および肥料の効果的な補助材として、また触媒やセラミックス材として世界的に注目され、現在、さまざまな用途開発の研究が行われている」
 と語る佐藤氏。
 同社はゼオライトの用途開発に力を入れてきたが、最近、ゼオライトからタイプの異なる3種類のソフトセラミックスの開発に成功し、近日中に特許出願予定。
 「ゼオライトの粒度は細かい方が比表面積が大きく、それに比例してイオン交換容量は大きくなり、また交換速度にも著しく影響する。従ってゼオライト原鉱を平均粒子径がサブミクロンになるまでに超微粒化し、さらに硬化体(造粒)にし熱加工することで、連続したインクボトル状の開放気孔体が形成されたソフトセラミックスとなる」
 と佐藤氏。
 こうして開発したソフトセラミックスはミネラルの溶脱速度に応じて次の3種類に分けられている。
 1、水中に入れておくと穏やかにミネラルが溶けていくタイプ
 2、ソフトセラミックスの中に水を通すだけでミネラルが素早く溶脱するタイプ。
 3、塩分を取り海水を淡水化した真水にミネラルを補給するタイプ。
 こうした性質を持つソフトセラミックスの用途としてまず考えられるのが浄水器など水処理分野への活用である。 

浄水装置、化粧品など
多方面への応用を期待
 

 東京の水はカルキ臭くてまずい、とは以前からよく言われるが、最近は東京に限らず大都市の水はまずいというのが通説のようだ。福岡でも全国の「おいしい水」「○○名水」といったミネラルウオーターがよく売れるし、浄水器を取り付けている家庭も多い。それだけ飲料水に対する人々の関心が高いということである。
 現在、家庭用簡易型浄水器で用いられてのは活性炭や中空糸膜をフィルター代わりにしたもの。ところが、価格が安く、カルキ臭を取るのに威力を発揮する活性炭は、活性炭内でのバクテリアの増殖が問題になっているし、中空糸膜は目詰まりを起こすため定期的に取り替える必要があるなど、いずれも一長一短。
 その点、同社がゼオライトから開発したソフトセラミックスをフィルターに利用すれば残留塩素を取り除くだけでなく、ミネラルを含んだおいしい水に変えることができる。
 「当社のソフトセラミックスを組み込むと水が腐敗しないばかりか、水道管内に発生する赤さびを防ぐこともできる」
 こうした点に着目した某大手家電メーカーが、ウォータークーラーに同社のソフトセラミックスを組み込みたいと早くも申し出ている。
 「吸着能力が高いので化粧品などの分野にも使える可能性が十分ある」と佐藤氏は言う。
 同社は平成10年1月から、このソフトセラミックスの量産化に着手し、販売を開始する予定。
 「当社はソフトセラミックスの供給販売を行い、この素材を活用したアプリケーションの開発は他社にお任せしようと考えている」
 と佐藤氏。

保冷庫・保冷車の
消臭・殺菌処理技術

 ところで、同社が中小創造法の認定を受けた技術は「保冷庫等の消臭・殺菌処理の技術開発」である。開発のきっかけは「偶然から始まったようなもの」という。
 ある時、社名の由来について尋ねられた佐藤氏が、ゼオライトは吸着・脱臭・イオン交換性質を持つ粘土質材料だと説明。その話を聞いた物流業界の人間が、保冷庫の悪臭も除去できるといいが、ともらした言葉がきっかけになり研究に着手したという。
 まず最初に手がけたのは悪臭の発生メカニズムの解明である。
 家庭用冷凍冷蔵庫でもそうだが、庫内には各種食品を出し入れするため、さまざまな食品の臭いが混じり合うだけでなく、ドアを開けた瞬間に不快な臭いがすることがある。庫内の壁面に付着した揮発性の物質をバクテリアが分解し、それが不快臭となっているのである。業務用の冷凍冷蔵庫や保冷車、ショーケースの場合、臭いがほかの食品に付着するのは非常に嫌われる。たかが臭いなどとは言ってられないのだ。ましてや悪臭の元がバクテリアや一部の菌類ともなれば、昨年のOー157騒動を想起するまでもなく大変である。つまり消臭は殺菌処理でもあるのだ。
 それでも家庭用冷凍冷蔵庫ぐらいなら中の食品を出して壁面を洗剤できれいにふけば悪臭を除去できないこともない。だが、業務用の冷凍冷蔵庫や保冷車となるとそう簡単にはいかないから難しい。
 一部ではオゾンによる殺菌処理技術を用いているところもあるが、「オゾンは残存性の問題や人体の肺機能に悪影響を及ぼす危険性がある」と佐藤氏は指摘する。
 そこで同社が開発したのは、それら臭いの物質、大腸菌群、一般細菌、真菌、芽胞などを分離分類し、それぞれの処理方法をシステム化した技術であり、トータルシステムとして近日中に特許出願する予定。
 同社ではこの技術に関連し、各種殺菌だけでなく悪臭処理も行う装置を今後開発していく予定である。 


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