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急ぎすぎるベンチャー達を待つ落とし穴

 「生き急ぎすぎました」。
ライブドア元社長の堀江貴文氏は保釈後、このように述べた。
まるでなにかに追われるように「生き急ぎ」拡大路線を突っ走った結果、ライブドアは上場廃止になり、彼は社長の座を追われた。
 しかし、ベンチャー経営者には多かれ少なかれ似たような所がある。
そして、なぜか皆同じような箇所で同じような失敗をする。
歴史は繰り返すのか。それとも歴史に学ばないのが人間なのか・・・。


成長の段階毎に異なる
ハードルが待ち受けている


 ベンチャーに限らず中小企業は障害物競走をしているようなものである。
一つのハードル(障害)を越えたと思っても、また次のハードルが待ち構えている。
それらのハードルの中には何度も繰り返し現れるものもあるし、形を変えて現れるものもある。

 何度も繰り返し現れるハードルの代表的なものは資金難と人材難だろう。
ただ、それらでさえ成長の各段階ごとに違う形で現れる。
例えば資金難にしても設立当初と発展段階では必要な金額も内容も異なるし、人材も然りだ。
初期のようにともかく人手が欲しい段階もあれば、人材の質が要求される段階もある。
こうした大小様々なハードルを上手に乗り越えていけるかどうかで、生き残れるかどうかが決まる。


1.3年内に来る資金難

 ベンチャー(以下VB)、中小企業にとって資金の問題は永遠につきまとう課題だが、最初の資金難は起業3年以内に確実にやってくる。
早いものは1年以内に資金難に陥り、早々と消えていく。
しかも、この傾向は今後ますます強まるに違いない。
5月に会社法が施行され、最低資本金制度が撤廃されたからだ。

 会社法の施行で起業はしやすくなったが、促成栽培みたいなもので潰れるのも速くなる。
 例えば資本金50万円の株式会社と資本金1,000万円の株式会社では何が違うのか。
資本金といってもほとんどの会社が運転資金に使うわけで、プールされる本当の意味での資本金ならいざ知らず、そうでなければ50万円も1,000万円も対外的な見てくれ以上に違いはない、という見方もあるだろう。

 果たしてそうだろうか。
そうではない。
そこには資本金の差以上に大きな開きが存在する。
 50万円の資本金で起業した人は50万円しか手持ちの資金がなかったか、50万円しか自分の事業に投資する覚悟がないか、あるいは50万円しか集められない程度の人的ネットワークしかなかったということだ。

 物心両面の財産、とりわけ人的ネットワークは金額以上の価値であり、いざという時ものを言う。
つまり資本金の額は単なる金額ではないということである。
3年以内に潰れるかどうかという時に、この人的ネットワークの有無が大きく影響してくる。


2.おだてと甘い誘惑にご用心

 伸びる企業は起業3〜5年でグングン頭角を現してくる。
因みにライブドア(当時の社名はオン・ザ・エッジ)は4年で上場したし、少し前に脚光を浴びた光通信は当時の最短記録8年で上場している。

 いずれにしろ頭角を現し注目されだすと周囲の態度が一変する。
まず行政関係者が満面に笑みを浮かべて寄ってくる。
続いて、いままで相手にもしてくれなかった金融機関やベンチャーキャピタルなどが歯の浮くような褒め言葉を口にして寄ってくる。

「革新的な技術、成長ベンチャーなので表彰したい」
「あなたの成功談を皆の前で話してくれませんか」
「補助金を出しましょう。産学連携で技術開発を進めませんか」
「研究所を作りませんか」
「資金ならいくらでも出しますよ」等々。

 このおだてや甘い言葉が危ない。
「豚もおだてりゃ木に登る」という言葉があるぐらいだから、人間はひとたまりもない。
補助金、助成金という「ニンジン」をぶら下げられ、おだてに乗って分不相応な研究所を作ったり、産学共同研究にのめり込んだ挙げ句、消えていったベンチャーは数多い。
 といって、補助金、助成金や産学共同研究などを一切するなと言っているわけではない。それで助かっている企業も多い。
しかし、分をわきまえた付き合いをすることが大事。
ところが、補助金をもらったり行政から表彰されたりすると、甘い誘いに断り切れず、いまはまだそこまで必要ないのだが、と思っていても、ついつい断り切れずズルズルと引きずり込まれてしまうことが問題なのだ。

 おだてや耳当たりのいい言葉は「死の接吻」と戒め、むしろ基礎体力の充実に力を注ぐべきだろう。


3.開発優先、営業軽視

 技術系ベンチャー・中小企業に多いのが開発優先で、営業面、販路開拓面を後回しにしがちな点。
 技術開発が重要なのは言うまでもないが、販売して資金を回収しなければ資金ショートするのは明らかだ。
 この事実に目をつむり、技術開発にのめり込み(逃げ)失敗するベンチャーも結構多い

 重要なのはいま開発している技術がコア技術なのか、そうでないのかを冷静に見極めることだ。
開発した当の本人はコア技術だと思い込んでいても、客観的に見ればどこにでもある周辺技術の寄せ集めや改良で作った製品というのがほとんどだ。
よほど画期的な商品でなければすぐ他に追随される。
むしろ営業に力を入れて早めに市場を押さえ、次の改良品を出すようにした方がいい。


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